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2020年 新しい中小企業政策の動向

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2020年度 テーマ1  『新しい中小企業政策の動向』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


2020年度 テーマ1  『新しい中小企業政策の動向』

論題
低迷する付加価値の向上に向けて、新たな価値を創出する中小企業への脱皮が大きな課題になっている。まず付加価値向上の視点について整理し説明するとともに、ついで製造業や卸売業、小売業、サービス業などのなかから、中小企業診断士として知見のある業界を取り上げ、中小企業としての有効な付加価値向上策を述べよ。


1.はじめに
日本の企業の労働生産性の低さは他のOECD諸国と比べると見劣りすることが言われて久しい。それは分子である付加価値が伸び悩んでいることが要因である。労働生産性は付加価値/従業員数であるが、分母の少ない従業員数で同一の付加価値額であれば、労働生産性は増加するが、付加価値額そのものは増えないのである。
以下に私の経験も踏まえて、論題に沿って付加価値向上策を述べる。


2.付加価値向上策
(1)プロセスとシステムの再定義と明確化
 色んな企業を見ていると、付加価値を生むためのプロセスの見直しやシステム化の意識が弱い感がある。いわゆる成り行きや歴史的経過の中で受注から生産、納品まで行われている例が少なくない。それは、もともと欧米に比べて日本文化の特質でシステム志向が弱く、属人的な理由や他社の例を参考にしてきている面があると思う。
ゆえに、自社のプロセスの中で付加価値を生むプロセスは何か、生まないプロセスは何かを検証して常に見直して、再定義化が必要と思われる。明確になっていないプロセスがあればそれは、付加価値を生んでいる可能性は小さいので他と統合できないか、割愛できないかなど明確にすべきである。
たとえば、検査プロセスがあったとすると、その検査は付加価値を生んでいるのか、コストの方が大きいのかである。検査業務を生業としている企業であれば付加価値を生むプロセスであるが、製品加工や製造を行っている企業の検査業務はコストの方が大であることがほとんどあると思われる。コストの方が大きいと判断された場合にどうするかである。人から機械での検査となるが、それはコストダウンにはなるが、付加価値の増加にはならない。検査業務に従事していた社員を付加価値を創出するプロセスに異動とする仕組みを整えていなければならない。それによってはじめて付加価値が増加するからである。
それでは、製造業で付加価値を創出するプロセスは、設計プロセス、製造プロセスが主となる。もちろん、仕事を持ってくる営業プロセスが機能して初めて、両プロセスが機能する。
製造プロセスであれば、あくまでの他社と比べての比較優位性で見た場合に、@所定の品質の製品を、A早く、B安く、C確実に製造することが重要となる。この4要素を製造プロセスで実現するための方策を自社なりに構築して、常に見直し検証を継続することが付加価値の増加をもたらすことになる。

(2)コアプロセスの強化並びに創出
そのため、自社の付加価値を創出するコアプロセスを明確にして、その強化が必要である。また、それまでにないコアプロセスを創出して付加価値の増加を図ることも肝要である。それは新事業分野への参入という形態で具現化される。
新分野は現在のコアプロセスから離れた領域ではリスクが大であるので、周辺領域への参入が望ましい。例えばサプライチェーンの中流に位置しているのであれば下流へ進出するとか、上流へ進出するかである。2020年版中小企業白書によると(上流+中流+下流)の事業領域を保有している場合が営業利益率3.5%と最も高い。

(3)各プロセスのモニタリング
製品の出来高や不良品の発生状況といった各プロセスのアウトプットのモニタリングだけで今後の付加価値増額を考えたときには事足りないと思われる。つまり、当該プロセスの動き具合がどうかを監視測定することが今後はより必要性を帯びてくると思われる。
例えば、MCのバイトの回転数や移動スピードを監視測定して、製品(加工)が出来上がる前に適切な加工条件で加工しているかを把握するのである。現在のIOTの技術も導入すれば、中小企業でも可能な範囲は広がっている。
 これによって、付加価値の創出がリアルタイムでデータとして入手して、より良い加工条件を探索するための情報源となる。

(3)営業利益の増加
前述したようにこれは、売上額の増加が一つの要素となる。単純化すれは売上=[1]単価×[2]数量なので、そのそれぞれについて述べる。
[1]単価について
前掲白書には値上げ前の懸念と、値上げ後の影響についての調査結果が掲載してあり、値上げにより4割の企業が販売数量が減るのではと心配していたが、実際に減ったのは2割台であった。また、値上げしても販売数量の減少やリピート顧客の減少等などの影響がなかった企業が6割台であった。
中小企業の販売先の多くは自社よりも規模が大きかったり大企業が多かったりの例が良く見受けられる。これまで中小企業というと自社で値段を付けられなくていわゆる指値で仕事をしていた癖がついているのかもしれない。値上げという行為は、仕事を失うという恐怖心も伴ってなかなか踏み切れなかったのかもしれない。しかし、杞憂で終わる場面が多いということが中小企業の経営者にとっては背中を押してくれる情報であると感じた。もちろん、値上げの根拠や背景、値上げ幅の妥当性については、取引先に説明がつき交渉のテーブルに挙げる内容とならなければならない。 
近年では、トラックドライバーの不足による物流費の値上げや金属相場の上昇による原材料の値上げなどは結構受けられた印象がある。発注側から見れば、サプライチェーンのより確実な確保や複数購買が多くなりつつ今日、価格を自社から提示できるようなコアプロセスを持っていることが不可欠である。
[2]数量について
これは、マーケティング活動による販売拡大策とほぼ同義である。今回のコロナ禍や日常的な国際問題が発生しているとしても中長期的にはグローバル化が進行することは間違いがない。換言すれば、中小企業であってもグローバル化への対応のハードルは色んな面(人・モノ・情報の流通等)で下がっているので、販売拡大を海外に展開することもこれまで以上に視野や選択に入れて良い環境である。
その際には、やはり自社の決して他社には譲れないコアプロセスと連携や委託しても良いプロセスを明確にして、独自性と依存性の関係や影響の検討を行って取り組むことが肝要である。
大企業に比べて経営資源が少ない中小企業が庇を貸して母屋を取られるようなことにはならないようにしなければならない。

(4)人件費の増加
人件費というと固定費でコストという感覚を持ちながら付加価値が増える時代ではない。付加価値を創出するために社員に投資する感覚に切り替える必要がある。この場合の投資は、給料の他に本人が成長して付加価値創出に貢献するための育成費用である。
前掲白書によると海外の比較した人的投資について言及している。概括すると、能力開発費としてアメリカはGDP比2.1%(2010〜2014年)であるが、日本は0.1%(2010〜2014年)に過ぎない。しかもアメリカが1995年以降ほぼ2%前後で推移しているが、日本は減少している(1995〜1999年の時は0.4%)のである。
このような状況が続けば、優秀な人材は外資系に流れたり、自分で創業したりで中小企業にはますます付加価値を創出する人材が遠くなってしまう。
中小企業の良さは会社全体が見えてその中で自分が何をやれば良いかが分かりやすいので、人材投資をもっと行うことが肝要となる。
そこで重要なのは、コアプロセスの進化・深化なのか新しいプロセスなのかなど、将来ビジョン(中期計画等)との関係を踏まえて人材育成との整合を図ることはいうまでもない。
もちろん、本人の適性や意思を踏まえた上で、評価制度や処遇制度、育成制度を繋げた有機手的なシステムとして再構築していかなければならない。

(5)減価償却費の増加
2019年中小企業白書によると、1990年には大企業も中小企業も設備年齢が同じであったが、その設備年齢に差が出て2017年には大企業は1.5倍に対して、中小企業は2倍になったとしている。中小企業の設備投資の更新期間が大企業に比べると長い現状である。それだけ最新の設備が導入されていない状況である。減価償却費が減って営業利益が増えてもトータルとしては同じである。今後の視点としては減価償却費を増やしても営業利益は変わらないかできれば営業利益を増やしたいのである。そのためには設備投資を適宜に行えるように財務体制も組織とすることが必要である。それが前述の常なるプロセスの見直し、人材の成長である。
他社にない設備投資、最新の設備を使いこなすプロセス、人材があってこそ導入した設備が稼いでくれて付加価値が増えていく構図を構築しなければならない。


3.事例の紹介
以上より、製造業をイメージした中小企業で付加価値を増やすには、製造プロセスや管理プロセスの見直し・改善、人材成長、設備投資がまさに三位一体となって上手くかみ合っていかなければならないが、そんなに簡単にいかないのが中小企業である。それぞれのタイミングがずれたり、どれかに偏ったりすることが常であるが、以下に最近の事例を簡単に紹介する。
業界に先駆けて、それまで人手で製造していた製造プロセス対して銀行借入れをして自動化設備を導入した。それによってどうなったか。
必要とする人材の力量が変わりプログラム、センサー知識、シーケンス、ロボット技術等の知識や経験を保有することとなった。
経営者のトップダウンで進めて、組織内には反対や軋轢が生じたが、中小企業の特有のオーナー社長のリーダーシップで断行した。それによって付加価値が増加した。

以上






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