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平成22年度 テーマ2『中小企業のものづくり支援』


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平成22年度 テーマ2『中小企業のものづくり支援』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成22年度 テーマ2『中小企業のものづくり支援』
中小企業が海外企業に対して競争力を維持していくための課題と方策

中小企業が海外企業に対して競争力を維持していくための課題と方策
1.はじめに
  昨今のデフレの継続、円高、新興国の台頭など日本の中小企業を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況が続いている。経営資源の不足している中小企業は海外企業、とりわけアジアの新興国に対しての競争力を維持しなければならないので、本論文ではそれを意識した課題と方策を述べる。
 本論文では、方策の前に海外企業や新興国の企業の台頭をどう捉えるかでその対応が変わってくるので、前段ではその競争条件等の課題について述べ、後段ではそれらに対する方策を述べる。

2.課題
(1)製造コスト
 課題の第1は製造コストである。コストを構成する人件費、エネルギー費用など製造原価などほとんどの費目で日本の方が高い。これは競争条件を考えるには非常に大きな課題となる。
(2)市場の発展性の違い
 日本は少子高齢化のまっただ中であり、総人口は減少を始めている。そのため消費や投資の伸び悩み、それによる所得の伸び悩みなどデフレが継続している。
 一方、新興国は人口が増加し所得も増えて市場として成長している。つまり、魅力的な個人市場や投資市場(設備投資や社会基盤投資を含む)を形成している。

3.重要な方策
 ものづくりのための製造コストと市場の課題を概括的に認識した上で、競争条件を維持・確保して新興国の海外企業に勝つ方策を、経験を交えて以下に述べる。
(1)経営方針と経営戦略の見直しと新たな設定
 海外企業の競争が激しくなれば自ずと戦略の見直しが迫られる。当該企業のそれまでの経過や実績と今後の経営環境を視野に入れて、自社のこれらをどうするかを考えなければならない。
 ここは重要なところなので私の診断やコンサルの例で述べる。
[1]海外工場(中国工場)への重点投資から国内工場へ徐々にシフト
 A社では、現在中国工場でほとんど生産しているが人件費の増大、労務管理の難しさ、現地での創業企業の台頭等から社長は中国工場での生産について違和感をも持ち始めていた。そこで、技術者の発掘や品質の高さ等から日本で自動機を開発して、国内で生産量を高める方向にハンドルを切り始めた。まだまだ生産量は中国であるがいずれは半々ぐらいにしたいと考えている。
[2]海外人材登用して、送り出し国への影響力の増大
 B社では、日本の研修制度を利用して中国から研修生を受け入れて当社の技術を学んでもらい、研修終了後に帰国した研修生を核に現地で工場を立ち上げた企業がある。これによって海外企業に発注されたかもしれない仕事を自社グループで受注を確保することができた。
[3]別の新興国へシフト
 現在は人口の多さや所得の伸び等から中国への投資や貿易が非常に盛んである。しかし、中小企業では中国人の労務管理等のマネジメントが難しい状況も生まれている。
 そこで、C社では中国ではなくベトナムやインドとの人脈の構築や市場調査を開始した会社もある。
以上の例は、いずれも海外企業や現地企業との競争により方針を見直して戦略を組み替えたものである。その際には、非常に多くの経営資源を消費するのでそれを保有しているかまたは調達できる中小企業でないといけない。
また、これらの戦略が今後とも有効であるとは限らない。海外企業との競争に負けないためには、常に経営環境の変化に目を配り、自社のポジションや経営資源との相互関係を見ながら経営を行っていくことが非常に重要である。
(2)競争条件の再定義
 海外企業との競争力の維持向上のためには、自社の戦う条件を見直して再定義するする必要がある。
例えば、昨今の円高について自社としては影響があるのか、あるとすればどのような影響か、直接でも間接でもとにかく分析する必要がある。その対策を必要とするのか、自社では何ができるのかなどを見直す。中小企業は役員会や幹部会等で議論して、管理者の共通認識としてもつことが必要である。
 換言すれば、勝負するための武器や技は何か、それで勝負になるのかを見極めるのである。不足していれば別の武器や技を必要とするのか、他から調達するのか、自社で賄うのか、また賄う時間はどの位か、そしてその時間は自社が持ちこたえられる時間であるのかなど、あらゆる角度から検討する必要がある。これは戦略変更との相互関係である面もある。
 これによって製品受注や生産形態、顧客や営業手法等が変わることもある。例えば、量産品から特注や一品製品に転換、顧客が会社から一般個人への移行、海外顧客から国内顧客への転換などは競争条件の再定義化の結果でもある。

4.具体的方策
(1)人材力の向上
 これは他の方策も含めて一番重要な取り組みである。そしてどのような人材を育てるかも極めて戦略的要素を含んでいる。人材育成は中小企業が不得手とする分野であるが、これはトップが意識して育てる仕組みを構築しなければならない。
製造工程にもP,D,C,Aがあるように人材育成にもその考え方を導入する必要がある。具体的には、自社に必要な業務とその求める力量を明確にしなければならない。個人毎に定期的に力量の評価を記録することも必要である。そして、不足する力量や伸ばすべき力量を明確にして育成計画を立てる。これも個人毎にいつまでに上げるかを本人の納得済みで作成する。そしてそれを実施して評価することも忘れてはならない。その結果力量がどう変化したかを確認するわけである。力量が計画的に向上しなかった時には育て方が悪かったのか、本人も問題なのかの検証も必要である。
 人材育成や確保については海外企業との競争を考えた場合には最優先方策として取り組む必要があると思われる。
(2)品質
 品質は日本の製造業の強みである。これは海外企業に負けない必須要件である。これが負けてくると一つの牙城が崩れて非常に厳しい状況になる。コストやスピードと併せて顧客要求を満足する品質の維持が必要である。しかし、これは相対的なものなので、コスト度外視の過剰品質にならないように注意しなければならない。
(3)コスト
 これは冒頭に述べたように海外企業、特に新興国と間では競争条件としては不利な要素である。しかし、ものづくりは他の要素との総合的な結果でもあるのでコストだけで受注決定や製品が決まるわけではない。しかし、無駄なコストは発生させない取り組みは日常的に行わなければならない。
(4)スピード
 海外企業との競争は国内市場で場でもあり得る。特に円高になれば相対的に安く製品が入ってくる。それに勝つにはスピードが大きな競争条件になる。ハイテクでもない標準的な量産品であれば、新興国で製造したものの方が需要としては大きくなる。それに対抗する条件としては、顧客の新製品の開発時の試作品や初期流動的な製品に使用される部品は、スピード、つまり納期の早さで競争力を維持することも可能である。この強みは開発品なので開発者と部品メーカーは密なコミュニケーションを取る必要があり、その際には海外企業に勝てる要素となる。
 しかし、海外企業も日本に開発拠点を置く企業も出てきているのでそれに負けないフットワークの軽さやきめ細かさも必要である。
(5)狙うマーケットの明確化
 中小企業は経営資源が乏しいので大企業と同じ競争条件で勝負することは避けなければならない。これは海外の企業との場合も同じである。同じ土俵で相撲をとってはいけないのである。ゆえに、必然的に自社が相撲を取りやすい場を探して、そこで勝負するようにしなければならない。そのためには経営資源を集中させることが大事である。
 私の診断先の一つに電気部品を製造している企業がある。これはローテクではあるが、電気回路に発生するノイズを除去する部品であり人件費の安い新興国でも十分に作れるものであるが、他の部品には手を出さないでそれに経営資源を集中している。
(6)組織としての課題解決力の向上
 次に、経営課題が生じた時の解決力を維持向上させなければならない。企業には海外企業との競争の他にいろいろな解決しなければならない課題が日常的に発生する。そのための社内に課題解決の仕組みや手順を構築しておかなければならない。
 例えば顧客からこれまでにないクレームが来た時にどのように対応するかなどの対応手順を定めておくのも、競争力維持向上のための方策の一つである。 
(7)開発機能の強化
 製造業が海外企業との競争を維持・向上していくためには、ものづくりの開発機能の強化も重要である。それはメーカーであれば勿論であるが、いわゆる下請けでも開発機能が必要と言うことである。下請けであれば元請けに対して新製品や新技術の提案やVA提案などである。換言すれば要求されたことをやるのは当然であるが、それ以上のことが出来るということをアピールすることである。それがお互いの業績に良い結果をもたらすことになれば、競争力が維持できる。
 そのためには、開発機能を組織の中にきちんと組み込み年間予算を付けて(例:売上の5%は開発投資などと)開発を継続的に行うようにしなければならない。 
(8)技能の伝承
これはものづくりの歴史が長い我が国であるからである。ものづくりの歴史の浅い新興国ではまだ問題なっていない。つまり、ものづくりに携わってきた経験豊かな人が定年等で退職していくので、技能の伝承が行われないまま次の世代に引き継がれるとものづくりの経験知がバトンタッチされないので、ものづくりのレベルが下がってしまう懸念である。

 私の診断先では、技能の伝承ために、[1]作業のワンポイント資料の作成(OJTを効果的に行うため)、[2]ビデオの作成(文字に出来ない作業を映像で残す)、[3]べからず集の作成(失敗例を収集して若い人の予防処置に活用)を行い始めた企業もある。

以上




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