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平成23年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』


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平成23年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成23年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』
海外市場の情報収集のあり方・留意点について、輸出型中小企業と直接投資型中小企業に分けて、診断・支援の経験等に基づいてあなたの考え方をのべよ

【1】海外市場の情報収集のあり方・留意点について、輸出型中小企業と直接投資型中小企業に分けて、診断・支援の経験等に基づいてあなたの考え方をのべよ。
1.はじめに
 中小企業にとって、震災や最近の円高の影響もあって厳しい経営環境が続いているが、中国やアセアンなどアジアの経済成長は世界の牽引役ともなっている側面もあることから、アジアの成長を自社の成長に取り込んで行くことも必要になることもある。
 以下に、私の支援経験を踏まえて、題意に基づいて輸出型と直接投資型における海外市場の情報収集についての留意点等について述べる。

2.輸出型中小企業の情報収集について
(1)輸出型中小企業の現状について
 海外市場の情報収集について述べる前に輸出型中小企業の現状について概括する。現状としては、中国やアセアン、北米、ヨーロッパのどの地域でも(日系企業や子会社よりも)現地企業への輸出が多い。輸出企業の現地で販売する分野としては、どの地域でも消費財、中間財、生産設備が上位3位を占めている。
(2)輸出における支援事例
・業種:農機具製造業  ・従業員:20名   
同社は播種機を自社製品として製造販売しており、そのホームページを見た韓国の農薬メーカーからそのユニットについての問い合わせであった。同社では輸出経験がなかったので経営者から相談があった。私からジェトロの窓口を紹介して、同社を訪問してもらって輸出についての情報提供を行った。また、日韓中小企業情報交流センターの窓口に問い合わせて、同センターのアドバイザーを紹介してもらい、経営者と東京で面談の機会を持ってもらった。そこでお互いに信頼関係ができたので、実際に問い合わせのあった韓国の会社(B社)を訪問することになった。
同社の経営者はB社の農薬の事業部長と面談して、製品の機能や仕様について理解してもらい基本的には取引条件を詰める段階にまでに、信頼関係を持つに至った。
結果的には、同社製品を輸出が始まり代金回収も円滑に進んでおり、経済成長の著しいアジアには他の国も販売できるのではないかと考えている。
(3)海外市場の情報収集のあり方・留意点について
 以上を踏まえて、輸出するために情報収集の留意点について述べる。
1)相手国の消費者・企業の嗜好やニーズの把握
 これは、輸出する消費財や生産財が想定する相手国のマーケットやニーズがあるかどうかの情報を収集することである。
一番重要なのは、経営者が現地で情報収集することである。経営者が相手国へ行って直接に消費者の生活や嗜好を確認したり、企業視察を行ってニーズを把握して情報収集をすることが肝要である。他には、人脈による情報収集、マスメディアからの情報収集、公的機関からの収集など経営者が納得できるまで収集することが重要である
2)輸出国の法律情報
輸出国によっては、国内産業を保護するために、輸入制限をしていたり、高い関税を課していたりする場合がある。せっかくの製品や技術でも、相手国によって排除、または競争力を弱められてしまえば、輸出は長続きしないので、輸出相手国の大使館等に出向くなどして確認する必要がある。
3)信用のおけるパートナーを選択する
輸出国には、法外な輸入仲介料をとっても有望な相手企業を紹介しないケースも多くある。実績があり、信用のおける輸入代理業者を選択する必要がある。決済についても、信用取引は避け、現金確認後の輸出など、一定期間実績を見てから信用取引に移行するのが肝要である。
4)輸出国での知的財産権の情報
日本国内で権利を確立していても海外ではまったく通用しないので、対象とする国(地域)ごとに申請を行って権利を取得するか、特許庁を窓口とする国際出願をして、権利を取得する対象国(地域)を絞り込み、対象国(地域)ごとに権利を取得していかなければならない。相談先としてのジェトロでは、世界各国の会社概要を掲載した「ジェトロビジネスライブリー」などを整備しており、これらを利用することも有効である。

3.直接投資型中小企業の情報収集について
(1)直接投資型中小企業の現状について
 次に直接投資型の中小企業の現状について概括する。
 投資先の地域として、最近は中国やアセアン諸国などアジアにおける現地法人の割合が増えている。機能別としては、中国・アセアン諸国では、“生産拠点”がトップで、北米・ヨーロッパでは“販売拠点”がトップである。現地法人の販売先としては、中国・アセアンでは“現地日系企業”、及び“日本への輸出”、“現地の地場企業”が上位3位を占めている。
(2)直接投資における支援事例
 ここでは、特に現地の地場企業の情報について支援した事例について述べる。
・業種:電子部品製造 ・従業員:70名(国内)  
設立した法人が現地で下請けを使って製造することにその際の品質管理の情報の入手として次のことを支援した。
・国内の内部監査の手法を取り入れて、統一的な目線での品質管理レベルの確認
・品質管理のフローチャートを各下請け企業に作成させて、品質管理レベルを確認
・一定の製品を製造させて、実際の製品の製品レベルを確認
これによって、ある程度の地場企業の選別の絞り込みができるようになった。
(3)海外市場の情報のあり方・留意点について
 次に以上を踏まえて、直接投資するために情報収集の留意点について述べる。
1)労働に関する法務、習慣の情報
 輸出型と大きく違うところは、現地社員を雇用することであるので、この点は非常に重要なことである。採用後の教育訓練や昇給など現地の習慣や慣例も情報として入手するする必要がある。
例えば、中国では、労働契約法第10条で「書面による労働契約(注:雇用契約と同義 注は筆者)を締結しなければならない」と明確に定めている。また、中国では試用期間の長さは雇用期間によって異なって(労働契約法第19条)いる。
以上のように、労務(採用、就業、賃金、解雇など)を取り巻く法律や慣習の情報は現地法人を立ち上げるには非常に重要な分野となる。
2)インフラストラクチャーの情報
 電力事情や通信事情、工業用水など現地工場を立ち上げる場合のインフラの状況は日本と大分異なってくる。この点は公表されている情報もあるが、実際と異なっていることもあるので、現地へ行って、話を聞いたり実際に見たりして確認することが肝要である。
3)地場企業の情報
 製造業の場合に、現地法人だけで製造が完結する場合は問題ないが、現地の下請けを使う場合に地場企業の情報(距離、品質レベル、生産能力など)を把握しておくことが必要である。
 その他、現地から輸出する場合には輸出法務面、税関手続き等の情報も重要である。

【2】海外市場の情報収集において、利用できる国の施策を解説せよ。(抜粋)
1)中小企業国際化支援アドバイス事業
 中小機構が行っている事業で、海外進出や輸出入などの海外展開に関する課題について情報提供も含めて無料で行っているものである。具体的には、海外経験が豊富な国別の専門家と分野別アドバイザーが海外展開の実現性、進出国、輸出相手国の情報や、海外向け製品の開発・改良、海外展開の進め方、留意点等、海外展開の初期段階から実現段階で、相談企業の経営状況も含めてアドバイスするものである。また、有料ではあるが、海外現地へ同行してアドバイスも行っている。これは、海外現地での事業可能性調査に際して専門家が現地まで同行して、工場の立地環境、許認可、規制、従業員採用、取引先開拓等について実務的なアドバイスを行うものである。
2)海外進出支援事業
 ジェトロが行っている事業で海外進出を検討している中小企業、海外進出後に問題を抱えている中小企業に対して海外進出に係わる情報提供やサポートを行っているものである。具体的には次のような施策がある。
・中小企業海外投資促進ミッション派遣事業
 日本企業の関心が高い国等へ中小企業による投資環境調査や市場調査を行うミッションを派遣するものである。ミッションは現地政府、現地企業等との意見交換や交流を通じて、効率的な情報収集が可能である。また、すでに日本企業が進出している国では日系企業との情報交換も可能で、最新の情報を入手することができる。
・海外法務・労務・税務・知的財産情報提供事業
 日本企業の海外活動が円滑に進められるように、現地の法制度、税務、労務、知的財産、取引の適正化等の専門性の高い経営課題についての情報提供やアドバイスを行うために欧米、アセアン、中国等に法律事務所、会計事務所、コンサルタント等と契約行って、相談に応じているものである。
3)輸出支援事業
ジェトロが行っている事業で、海外販路開拓や外国企業との業務提携等を行う際の支援を行っているものである。例えば、技術力が高く海外とのビジネスに意欲のある中小企業に海外企業との橋渡しや経済連携協定の活用の相談等に応じるものである。具体的には次のような施策がある。
・海外展示会等出店支援事業
 海外展示会でジェトロが主催するブースへ企業の参加を支援して、ブースを訪れるバイヤーと実際に商談を行うことを支援するものである。
・海外販路開拓事前対策事業(バイヤー招へい事業)
 海外のバイヤーを招へいして、国内での商談会の開催や海外市場に合わせた商品の開発・改良に資する情報・アドバイスの提供するものである。これによって、自社製品の海外販路開拓の可能性を探って、マーケティングの機会を提供するものである。
・輸出促進ミッション派遣事業
 中小企業の関心が高い海外市場に向けて、市場開拓の足がかりとなるような現地市場の視察、関係者との意見交換、ビジネスマッチング支援などを行うミッションを派遣するものである。

以上




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