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平成23年度 テーマ2『中小企業の活性化のための戦略的CSRについて』


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平成23年度 テーマ2『中小企業の活性化のための戦略的CSRについて』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦

平成23年度 テーマ2『中小企業の活性化のための戦略的CSRについて』
そもそもCSR (企業の社会的責任) とは何か

1.そもそもCSR (企業の社会的責任) とは何か
 2010年11月に発行されたISO26000(以下:ISO)「社会的責任に関する手引き」は、“社会的責任”を次のように定義している。
 『組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任のこと。
・健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展に貢献する。
・ステークホルダーの期待に配慮する。
・関連法令を順守し、国際行動規範と整合している。
・その組織全体に統合され、その組織の中で実践される。』
 そして、上記定義に出てくる用語を次のように定めている。
“透明性”:“社会及び環境に影響を与える決定及び活動に関する公開性、並びにこれらを明確で、正確で、時宜を得て、誠実で、且つ適切な方法で伝えようとする意欲”のこと。
“倫理的な行動”:“正しいまたは良いと認められた原則に従っており、国際行動規範との整合性がとれた行動”のこと。
“国際行動規範”:“国際間で普遍的に認められていたり、政府間合意から導かれる社会的に責任ある組織の行動に対する期待”のこと。
 今日の企業の意志決定と行動は、科学技術の進歩やグローバル化等により、人々の生活や地球環境の非常に大きな影響を与える状況ある。企業の活動は人々の精神や肉体を使用し、地球資源を消費して行われているので、社会的責任を果たす義務に焦点が当てられるようになってきたのである。
 それは、ステークホルダー(その組織の決定、活動に関係する利害関係者すべて)や社会並びに地球環境への責任も含まれている。
 最近の事例では、原発に関する地元公聴会に対して電力会社が“やらせメール”を発信した行動は、上記の“透明性や倫理的な行動”から逸脱している活動である。
 また、今回の震災直後に運送会社が自社の物流ネットワークを活用して被災地にいち早く 救援物資を届けたこと社会的な責任の一端を果たした行動といえる。
 このように、高度情報化社会の発展や人々の経験知の蓄積より、企業の行動が社会から監視され評価されて厳しく選別される時代と言える。

2.CSRの目的
 ISOは“持続可能な発展への組織の貢献を最大化する”と規定している。換言すれば、社会の継続的な発展のために、企業は経営資源を効率よく活用して出来る限り社会に貢献することである。
 企業の経営資源は人、モノ、お金である。これらは社会から調達したものであるから、それらを活用して社会の発展に貢献することに目的がある。

3.目的達成のための組織が取るべき社会に対する認識
 目的達成のために、組織に必要としている社会に対する認識を概説する。これは、組織の規模の大小、民間・非民間、非営利・営利、業種を問わないことであり、重要な価値観でもあるので、若干述べることとする。
 ISOは次の7つを社会的責任の中核的主題として、それらに全体的アプローチと相互依存性、並びにバランスを取りながら組織運営をしなければすることを示している。
・組織統治:目的達成に向けて組織の意志決定、実施するシステム
・人権:市民的権利(自由、表現の権利等も含む)、経済的権利、社会的権利(労働権も含む)等の全ての人に与えられた基本的権利
・労働慣行:採用、昇進、懲戒、苦情対応、異動、教育訓練、労働安全衛生、労働条件に影響を及ぼすあらゆる方針や慣行
・環境:組織の活動が引き起こす環境に(有害か有益かを問わず)及ぼす影響
・公正な事業慣行:組織が他の組織と取引を行う上での倫理的な行動
・消費者課題:公正なマーケティング慣行、紛争解決及び救済、データ及びプライバシーの保護など弱い立場にある消費者への対応
・コミュニティへの参画及びコミュニティの発展:組織がコミュニティへ敬意を払って関与すると市民の立場に立った価値観を強化する。

4. 活性化のために中小企業の戦略的CSRの必要性
 以上から、今日的には社会的責任を果たすことは、ステークホルダーのみならず社会全体から評価され支持される。その結果、財務体制の向上や社会貢献が増大する。
 題意にある中小企業の活性化の観点からも同様で、戦略的に取り組むと次のような利点があり、中小企業が発展のためにも必要である。
・社会の期待、社会的責任を果たす機会、逆に社会的責任を果たさないリスクの認識を向上させることに、社会から入手する情報に基づいて適切な意志決定を行うよう
になる。
・組織のリスクマネジメントの運用体制を強化させる。
・組織の評価を上げて、社会的信頼を促進させる。
・組織が活動する上での社会的な認可を与える。
・技術革新を引き起こす。
・組織の生産性・資源効率の向上、廃棄物の減少等により競争力を高める。
・従業員の安全衛生、忠誠心、参画意識、士気、能力を高める。
・公正な競争などにより取引の信頼性、公正性を高める。
・消費者との紛争の可能性を予防して、減少させる。

5. その課題及び留意点等
 中小企業は大企業に比べて経営資源が少ない。そのために大企業が行っているよ うなことまでは出来ないが、戦略的に取り組むことによって前述の利点を獲得することが出来る。しかし、そのための課題や留意点があるので次にそれを述べる。
 【1】社長の認識
 第一に、組織の社長が社会的責任についての意識を持つことが重要である。 これまで述べたように、人間社会や地球ために持続可能な発展への組織の貢献であるので、その点を強く認識することが必要である。
 例えば、利益を確保することもその組織の維持(雇用等による貢献)や税金の支払いで、社会的責任を果たすということである。また、今回の震災で、中小企業でも売上の1%を寄付することや社員が復旧に向かうことを許可することも社会的責任を果たしたと言える。しかし、それらは組織の維持が出来て初めて出来ることなので、前述のバランスを取りながら統治することが必要である。
 社長の認識が組織の理念や経営方針に具現化される。それらを明確に名文化して組織に周知している中小企業はまだ少ない。理念や方針は、事業と社会との関係性について組織の考え方を表明したもので、いわば組織とステークホルダー、社会に約束したものである。これを設定して、組織内への周知、社会への発信を行うことが重要である。
 【2】経営資源の確保 ・ 調達
 前述のような目的を達成するためには、自ずと確保並びに調達する経営資源が変わってくる。例えば、資材であれば、環境に優しいグリーン調達、生産設備であれば省エネに加えて、リサイクルをし易い設計になっているかなど環境ラベルタイプVなどを使用したりすることも出てくる。それらは一般に価格は高いが、自社の可能な範囲で調達する意識が重要となる。
 【3】人材育成、 安全衛生
 組織の理念、経営方針を受けて、目的達成に向けて職務を遂行する従業員の育成が必要となる。中小企業にとってそれが一番の課題である。この分野は、即効性を狙うのではなくて中長期的な観点で取り組むことが必要である。そのために人材育成計画等の仕組みが重要となる。
 期待する人材像はこれまでの専門的職務能力に加えて、これまで述べたような倫理的価値観、消費者やユーザー視点で物事について認識を持つことができるイメージである。
 また、作業環境の整備、心身共に健全性を維持できる職場を提供することも課題である。
 【4】組織設計と機能の拡大
 大企業であれば、“CSR推進室”等の専門部署を設けているが、中小企業は経営資源が少ないので現実的ではない。しかし、ライン上の組織ではなくても、スタッフ組織もしく はプロジェク ト、委員会組織であっても良い。
 考え方としては、本業以外での社会との接点を広げることである。例えば、“地域清掃”や“花いっぱい運動”が地域で計画されているとすれば、それらに積極的に参画するための機能を持つようにすることも必要と考える。
 【5】マネジメ ントシステム
 管理体制にも課題と留意点がある。組織内部が社会的責任を果たす体制を維持するための仕組みが適切で妥当であるかを評価することが肝要だからである。例えば、内部監査、顧客や近隣住民などステークホルダーからのクレーム対応体制、従業員からの内部苦情対応体制、顧客や従業員のプライバシーなど情報セキュリティ体制の確実な運用が必要である。
 これらは内部コストがかかる。これを組織自身が負担できる範囲でマネジメントシステムとして構築して運用・維持することが重要となる。
 【6】情報発信
 大企業は社会的責任について「CSRレポート」等の名称で、取り組み姿勢や成果をまとめて、社会に発信している。そして希望者へは冊子として送付したりホームページで公開してダウンロードできるようにしている。この行動も社会的責任に関するコミュニケーションである。
 情報発信力について中小企業は弱い面がある。しかし、ホームページはそんなにコストはかからないので、事業内容ばかりでなく、ステークホルダー全体を意識した情報(対社会の姿勢、環境活動、コミュニティ活動、労働安全衛生、マネジメントシステム体制など) 発信を行うことが肝要である。

6. まとめ
 今回ISOは“社会的責任に関する手引き”としてまとめたが、振り返ると、以前からゴーイングコンサーン、企業は社会の公器、近江商人の家訓(三方よし、正直・信用等)など社会的責任を著した考え方があった。
 ISOはグローバルや高度情報化社会の進展など変化する経営環境や技術革新や人間活動の影響力の加速度的増大など、組織の社会的影響の大きさを考慮して社会的責任に体系的に焦点を充てたものである。それが持続可能な発展に貢献するとしている。
 全く私も同感で賛同する立場である。社会的責任は規模の大小ではないので中小企業も社会的責任を意識した経営を行うことは、中小企業の活性化につながり発展に繋がると確信するものである。

以上




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