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平成24年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』


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平成24年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成24年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』
中小企業の労働生産性を向上させるための方策を2つ挙げて、診断事例等に基づいてそれらの方策を行う場合のポイント・留意点を述べよ

【1】中小企業の労働生産性を向上させるための方策を2つ挙げて、診断事例等に基づいてそれらの方策を行う場合のポイント・留意点を述べよ。
 大企業と中小企業では労働生産性に大きな違いが出ている。本論文ではその違いを明らかにしてその原因を探ることとする。その原因とこれまでの診断経験から、中小企業の労働生産性を高める方策について述べる。
(1)労働生産性の現状
1)大企業と中小企業の現状
 大企業と中小企業の労働生産性は、2012年度の中小企業白書では次のように述べている。全産業(非一次産業)において2008年、2009年、2010年で大企業は784万円、762万円、830万円、中小企業は483万円、487万円、511万円であり、その差は301万円、275万円、319万円である。2009年にはその差が縮まったが、2010年には差が開いている。そして、2010年には中小企業の労働生産性は大企業の61.5%にしか過ぎない実態である。
 これでは給与、利益の面で中小企業は優秀な人材獲得、設備投資など競争を勝ち抜くには不利な状況で、中小企業の労働生産性の向上は、非常に重要な課題で全従業員の66%を占める中小企業の喫緊の課題であることが分かる。
2)その違いの原因
その違いの要因は複数であるので、以下にそれを述べる。
 a)一人あたりの売上高の違い:同年の白書によると、一人あたりのそれは、大企業は4,339万円で、中小企業は2,280万円(対大企業比52.5%)である。労働生産性は、営業利益+人件費+支払利息+動産・不動産賃借料+租税公課なので、換言すれば、売上−(材料費+外注加工費+上記以外の経費)なので、売上が付加価値に与える影響は大きい。
 やはり、中小企業の労働生産性が低い原因の一つには一人あたりの売上が大企業の約半分しかないことが挙げられる。
 b)売上高営業利益率の違い:同書には、総資本営業利益率と総資本回転率の統計結果の数字が掲載されているが、売上高営業利益率は掲載されていない。しかし、前2者からそれを計算すると、大企業は2.8%であり、中小企業は1.5%である。営業利益は付加価値額を左右するので、この収益性の良否が労働生産性に直結する。
 c)総資本営業利益率の違い:これも収益性の一つであり、大企業は3.3%であり、中小企業は1.5%である。1年間に資本を効果的に使用して利益を出したかを表しているので、中小企業は大企業に比べて資本の効率的使用が劣っていると言わざるを得ない状況である。
 d)総資本回転率の違い:大企業は1.2回で、中小企業は1.0回である。これは売上を上げきれていないことと、前述の資本の効果的使用が原因である。
 e)労働装備率の違い:基本的には収益性の低さから設備投資や更新が大企業に比べて出来ないからである。大企業は設備や機械を利用して、売上や利益につなげているが、中小企業はそこまで達していないということである。別の見方をすれば、中小企業が得意とする職人技で手作りでもよいが、単価を高くして売るノウハウが少ないとも言える。
(2)労働生産性向上の方策の留意点・ポイント
 以上、見てきたように労働生産性を向上させるには、基本的には、一人あたりの売上の増加、営業利益率の向上、資本効率の向上、設備投資により付加価値額の増加を図ることが肝要である。そのためには下記の取り組みが必要となる。
 1)人的資源関係
 ア)社長自身の強い意識改革
 以上の実態を踏まえて、自社の労働生産性を向上することが最優先課題と位置づけてトップが自社の改革を行うために、社長自身の意識改革が無いとなかなか向上につながらない。つまり、これまでの延長線上ではこれまで通りである。そのためには自社の決算書から労働生産性の向上を阻害している原因な何かを認識して、それらに優先度を付けて改革への取り組み姿勢を鮮明にしなければならない。そして、社内に明言してそのシナリオを作成し、改革の実践を継続することである。
 イ)人材育成、人材確保
 社長の意識が変わり労働生産性の向上のために付加価値を創出する社員像も変わってくる。人材育成、能力開発、人材確保の取り組みを変わってくる。そのための方策のポイントは次の通りである。
a)これまでと違う力量の必要性
例えば、売上の数字を作る営業社員に求められる社員像は次のような力量がますます大きくなってくる。顧客の困り事、欲しい事、喜びそうなことを聞き出し、あるいは探り、提案する力量である。これによって、他社とは質の異なる信頼関係を構築することによって、継続的かつ新しい商品の取引を開始する可能性がたかまる。つまり、顧客とのコミュニケーション能力、観察力、業界の動向などにアンテナを張っていることなどである。
また、商品開発者は作る側の論理では無くて、これまで以上に買う人・使う人の立場で開発する力量が求められる。これは頭で分かっていてもいざ試作の段階になると材料・設備・工程のせいにしてしまうことが良くある。アップル社のスティーブジョブズはあくまでも一般の利用者の立場として開発者と接した話は有名である。 
 つまり、一人あたりの労働生産性の向上のためには、会社が求める力量をこれまでと違う力量を明確にする必要がある。
b)継続的な能力開発の仕組み
 顧客の変化、経営環境の変化等により、力量変化は勿論であるが、その能力を高める取り組みも重要である。前述の例であれば、中小企業の営業社員であっても(それまで通訳を介していたのを)英語でコミュニケーションをとれれば、顧客との関係が変わってくる時代である。
 開発社員であっても、部品の要素開発であった場面から部品全体、ひいては部品を使用するユニット開発、そして製品開発と(水平的)進化していくことも考えられるし、当該部品の小型化、高性能化など(垂直的)進化もあるかもしれない。そのために、当該場面の能力からその周辺領域の能力開発の仕組みを継続的に行う仕組みがポイントである。
c)社員満足の向上の取り組み
 労働生産性向上のためには、社員から生き生きと積極的な気持ちで前向きに働いてもらうことがポイントである。そのためには、社員の能力発揮の場とその評価処遇が整合していなければならない。社長は顧客満足と社員満足を同時成立することを目指さなければならない。 
 具体的には、当該社員の能力をフルに発揮する仕事や職場環境を提供しているか、その評価処遇が他の社員と比べて、不整合感はないかなどである。身近には個人面談を行う中小企業も多くなっているが、その面談の場が人事制度の何の役割を果たすのかが明確になっていなかったりする。今後の社員満足向上のためにはキャリア形成とリンクさせた人事制度の構築が必要である。
 2)マーケティング活動の促進
 中小企業はこれまで以上にマーケティングに意識を持っていかなければならない。それは単なる販売促進ではなく、市場や顕在顧客や潜在顧客に自社の製品・サービスを媒介としてコミュニケーションするものである。
 a)売上の増加
既存取引先への働きかけの他に、新規取引先を狙って売上の増加をはかることである。その場合には、前述のようにこれまでの営業社員とは別の力量が必要なるので、これは会社全体の取り組みが必要となる。
(事例)醸造会社の例では、ルートセールス的に顧客を廻っている営業社員の力量から、狙う新規取引先スーパー等の購買担当者に対して、消費者のライフスタイルに提案できる営業社員である。
 b)他社との製品・サービスの違い
 他社の動向や顧客の意向を汲んで、これまでに無い違いを際だたせる取り組みである。金型であれば、他社には耐久性、メンテナンス性など海外の金型には無い品質特性を盛り込んで、多忙を極めている事業者もある。
 c)新製品・新サービスの投入
 既存の製品・サービスのみではいずれ陳腐化して付加価値が下がっていくので、常に新しい“何か”を提供していかなければならない。高い付加価値の創出を継続している企業は、必ず新しい“何か”を提供している。
 (事例)前述の醸造会社では、これまでの製品の他に地元の果物も使ったリキュールを開発して販売を開始した。マーケティングスタイル(営業、提案、コマーシャル、キャッチコピーなど)の変化、開発に伴う人材の変化等を生み出して、付加価値が高まってきている。

【2】中小企業の労働生産性を向上させるために利用できる国の施策を解説せよ。
 労働生産性向上につながる施策は数多くあるが、ここではその代表例として人材育成面と販売促進施策について述べる。
 1)キャリア形成助成金
事業主が、その雇用する労働者に対し、職業訓練の実施、自発的な職業能力開発の支援を推進した場合に、訓練経費や訓練中の賃金等を助成するものである。
基本的要件として、 労働組合等の意見を聴いて、事業内職業能力開発計画及びこれに基づく年間職業能力開発計画を作成している事業主であって、当該計画の内容をその雇用する労働者等に対して周知しているものであること。 そして、職業能力開発推進者を選任していることなどがある。
訓練等支援給付金は、年間職業能力開発計画に基づき、OFF−JTには経費・賃金 の助成率として1/3、OJTには600円/1hの助成をおこなうものである。
 2)中小企業総合展
新たな販路先・事業パートナーを見つけたいという場合に、自ら開発した新製品やサービス等を広く紹介し、販路の拡大を考えている中小企業者等に、自ら開発した新商品・新技術等の取り組みを、出展による展示・プレゼンテーションにより紹介することができるものである。会場内には来場者との商談コーナーや中小企業支援機関による施策普及コーナー等も設置されている。

以上




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