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平成24年度 テーマ2『6次産業化支援』


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平成24年度 テーマ2『6次産業化支援』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成24年度 テーマ2『6次産業化支援』
6次産業化の必要性と期待される効果についてのべよ


【1】6次産業化の必要性と期待される効果についてのべよ。
(1)その必要性
 1)農林漁業従事者の所得の増加
 6次産業化の必要性は、第1次産業に従事している農林漁業者の所得の増加である。
農業を例に取れば、平成21年度のおける農家1戸あたりの生産経費を除いた所得は280万円ほどであり、一方、同年における勤労者の平均所得は450万円なので、農家の所得は勤労者の6割にしかならない現状である。そのため、農林漁業を中心とする地域は、消費動向も弱く、若者は域外への流出も顕著で、他の産業の立地も弱く、それらが悪循環となって、地域の疲弊が進んでいる。
そのような状況に鑑み、6次産業化はその名の如く1次産業と2次産業の製造業及び3次産業の卸・小売業・サービス・飲食業が連携・融合した形で事業を進める産業である。つまり、第1次産業から産出される素材で販売するだけでは、付加価値を付けにくく生産者の所得が他の産業に比べてどうしても所得が小さい。そこで、第1次産業の素材製品に他の産業の付加価値を加えることによって、1次産業に従事している農林漁業者の所得を増加させる必要があるのである。
 2)地域活性化の必要性
 1次産業の素材に付加価値を付けるために、例えば加工場などの製造業、観光客に飲食を提供することによって、当該地域に製造業や飲食店が立地して、新たな雇用が生まれたり、所得が増えて、消費も増える構図となる。それによって若者の流出も減少して、結果として地域の活性化が図られる。ゆえに、地域活性化のためにも1次産業の6次産業化の必要性が求められる。
 3)食糧自給率の向上
 日本のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度の73%から大きく低下し、近年40%前後で推移している。これは、円高等による安い輸入品の流入、食生活の洋風化による日本古来の食材の消費低迷などであり、今後の世界的食糧事情を考えると日本の食糧自給率を50%に上げることも目標ともされている。
 ゆえに、生産食料自給率を上げるために農林漁業者が意欲を持って生産するために6次産業化が必要となっている。
(2)期待される効果
 1)6次産業の創出による雇用の増加
 前述したように、2次産業としての製造業、3次産業としての卸・小売業・サービス・飲食業が連携・融合するので、そこで働く従業員が必要となる。例えば、“玄米”として農協に販売していた農家が、志を一つにする仲間と農業法人を設立して、“米粉”を製造するようになれば、そこに働く場が出来る。そのような産業としての重層構造が出来れば、雇用が増加することになる。
 2)地域における消費の拡大
 上例で言えば、“米粉”製造工場で働いた社員に給料が支払われ、地元の商店や飲食店でお金を使うことになる。それによって地域における消費の拡大につながるようになる。
 3)人口減少の低下及び観光入り込み数の増加
 働く場が出来るようなれば、流出していた若者が定住する可能性も増えて、人口減少が低下することも出てくる。
 また、産直レストランや観光農園、体験型農業など、色んなアイデアで観光客を増やすこともできる。それによっても働く場や所得が増える効果も期待できる。

【2】6次産業化を進めるにあたって中小企業診断士の役割について述べよ。
(1)事業モデルの構築支援
 6次産業化のためには、事業モデルの構築が重要になる。中小企業診断士はこれまで2次産業や3次産業には深く関与してきたので、農林漁業から産出される素材から、2次産業化または3次産業化、あるいはその両方兼ね備えた事業化の構想の支援である。その際には、その素材のもっている特徴や生産者の意向、その地域の特性、人脈、公的支援制度等を考慮して、進めることとなる。
 例えば、米作農家から相談を持ちかけられた時に、農家の意向、投資できる金額、事業を従事できる人、将来の構想等を伺ってモデルを構築する。その際には、他の連携した方が良い選択肢があるので、それも含めて評価して事業モデルの構築支援を行う。
(2)事業計画立案の支援
 事業化モデルから、具体的な事業計画に落とし込むことが必要である。これについては、中小企業診断士はこれまでの豊富な経験や知見から経営者と一緒になって作成支援することができる。具体的には、売上計画、それにかかる経費、投資計画、その調達計画、事業実施方法(営業、製造、開発など)を明確にして、事業全体の目標とする訳である。
(3)事業推進の支援
 1)マーケティング
 これは上記計画を実現するために、想定した顧客や市場に自社の製品・サービスを周知して、販売・売上から回収までのストーリーを支援するのである。単にPRさえすれば顧客から支持される経営環境ではないので、製品・サービスのコンセプト、ストーリー、顧客のコミュニケーションを具現化する支援である。場合によっては中小企業診断士自身が顧客と接して、マーケティングの実例を示さなければならない時もあると思われる。
 特に農林漁業者はマーケティングの考え方や経験が不十分な人が多いので、これからの中小企業診断士は売上につなげる実践的な言動が求められる場面も出てくるので、そのような役割も必要である。
 2)マッチング支援
 農林漁業者はこれまで2次産業や3次産業の企業との接点が少なかったので、なかなか連携や融合する企業を把握する手だてを持たない場合が多い。その点からすると中小企業診断士はこれまでの職務経験から地域のみならず域外や首都圏の企業の接点もある。故に、支援内容から他の企業との連携が選択肢に入ってきたら、その企業とのマッチング支援を行う必要がある。
 3)経営者も含めた人材育成
 農林漁業者は、組織的経営のノウハウが少ない場合が多い。中小企業診断士は、戦略・戦術、経営管理、リーダーシップ、中間管理職の使命など企業経営のためのいわゆるマメジメントには造詣が深い。故に、中小企業診断士は経営者とのコミュニケーションを通して、農林漁業者を経営者としての育成、管理者育成など、組織運営のための人材育成の役割として重要な機能をもつ必要がある。
 4)組織管理のノウハウの伝授
 人材育成を通して、管理の基本であるP,D,C,Aや社員のモチベーションアップの手法、コストダウンの手法など経営のノウハウの伝授の役割も重要である。
 5)公的制度の活用支援
 6次産業化については、前述の必要性から政府をはじめとして地元自治体などが公的制度を設けているところが多くなっている。中小企業診断士はそのような情報を収集して吟味して、相談者の内容と勘案して当該制度が活用できるかを判断して、相談者にフィードバックする役割も重要である。

【3】6次産業化に関する国の施策について述べよ。
 代表的なものには、農林水産省の6次産業化法による施策と、経済産業省の農商工等連携促進法があるので、その2つについて述べる。
(1)6次産業化法の関連施策
6次産業化、地産地消等、地域の活性化や高付加価値化に役立つ創意工夫を凝らした取り組みを全面的に支援している。具体的には次のものがある。
 1)総合化事業計画(農林水産大臣が認定)
農林漁業者等が、農林水産物及び副産物(バイオマス等)の生産及びその加工又は販売を一体的に行う事業活動に関する計画に対して、農林漁業者等の取り組みに協力する民間事業者(促進事業者)も支援対象としている。
・産地リレーによる野菜の契約取引の交付金対象産地を拡大(野菜生産出荷安定法)
・農林漁業者向けの無利子融資資金の貸付対象者を拡大(促進事業者)、
・償還期限・据置期間の延長(償還期間:10年→12年、据置期間:3年→5年)(農業改良資金融通法等)
・直売施設等を建築する際の農地転用等の手続を簡素化(農地法、酪肉振興法、都市計画法)
・食品の加工・販売に関する資金を債務保証の対象に追加(食品流通構造改善促進法)
 2)研究開発・成果利用事業計画(農林水産大臣及び事業所管大臣が認定)支援措置
・新品種の品種登録に要する出願料等を1/4に減免(種苗法)
・食品の加工・販売に関する研究開発・成果利用に必要な資金を債務保証の対象に追加(食品流通構造改善促進法)
・研究開発・成果利用に必要な施設を建築する際の農地転用の手続を簡素化(農地法)
(2)農商工等連携促進法の関連施策
 支援内容としては、中小企業者と農林漁業者が連携して新商品・新サービスの開発等を行う「農商工等連携事業計画」を共同で作成し、認定を受けると、補助金、融資等の各種支援施策を利用することができる。具体的には次の内容がある。
・新事業活動促進支援補助金:上限3000万円(補助率2/3以内):試作品開発、展示会出展等に係る費用の一部を補助。
・マーケティング等の専門家による支援(新事業創出支援事業):事業計画作成から試作品開発、販路開拓まで専門家による一貫した支援が受けられる。
・政府系金融機関による融資制度:設備資金及び長期運転資金について融資される制度がある。
・信用保証の特例:保証限度額の拡大等の特例が適用される。
・小規模企業者等設備導入資金助成法の特例:認定を受けた小規模企業者に対し、設備資金貸付の貸付割合を引き上げる。
・食品流通構造改善促進機構による債務保証等:食品関係の事業を行う場合は、必要な資金の借入に対し債務保証等を受けられる。
・農業改良資金融通法、林業・木材産業改善資金助成法、沿岸漁業改善資金助成法の特例:認定を受けた中小企業者が、農林漁業者が行う農業改良措置等を支援する場合に、農業改良資金等の融資制度の対象とし、計画の認定を受けた中小企業者又は農林漁業者が当該計画に基づいて行う事業に必要な農業改良資金等の償還期間及び据置期間を延長する(償還期間:1 0年→1 2年、据置期間:3年→5年) 。

以上




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