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平成27年度 テーマ1 『新しい中小企業政策について』


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平成27年度 テーマ1 『新しい中小企業政策について』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成27年度 テーマ1 『新しい中小企業政策について』

 

設問(1) 中心市街地活性化に係わる「まちづくり会社」と商店街との連携・役割分担をすすめる際に、中小企業診断士としてどのような診断・助言をしたらよいかを述べよ。


1.基本的認識
 多くの地方の中心市街地と言われる以前からの商店街を含めたエリアは衰退の一途をたどっている。平成10年にいわゆるまちづくり3法が成立してからは特に行政や商工会議所等の公的機関は商店街対策に加えて、まちづくりにもシフトした。しかし、なかなか地方都市の商店街の活性化につながっていない状況である。
 これは、よく言われるように商店街の持っている機能(提供している機能)と地域住民が必要としている機能がミスマッチを起こしているからである。私見としては、どちらかというと地域住民のライフスタイルの変化に商店街が追随出来てないことが要因であると思っている。極論すれば、交通インフラ、情報インフラ、大手資本の進出等の社会的変化等が起きてライフスタイルが大きく変化しているが、商店街は個店が線的あるいは面的に立地して、空いている隣の駐車場に気軽にとめることができないなど、旧態依然の商店街も多い状況である。換言すれば、商店街自体が地域住民にバリアを張ったような感もある。
 そして、ますます商店街は疲弊してその子供たちも後継ぎには魅力を感じないで、公務員や会社員になったりして、未来への投資もしなくなった。一言では悪循環である。
 ここで、登場したのがまちづくりの視点で商店街を含めて中心市街地活性化法に基づいた、市街地中心市街地の活性化を図る機能を持った法人の登場である。
 以下に、題意に沿って商店街とまちづくりの関係性を踏まえて、両者の連携や役割分担、両者が有効に機能するための診断・助言について述べる。

2.まちづくり会社の機能
 商店街は民間の個店の集合体であるが、まちづくり会社はNPOや株式会社等の法人である。しかし、公的機関からの出資もあるので、利益追求ばかりではなく公共性と公益性の機能をもっている。その機能はその地域のニーズから派生して、大きく次の4つの分類ができる。

  分類 機能
街なか活性化推進型 イベント等の開催や支援を行って来街者を増やして、賑わいを醸し出す。
再開発等施設管理運営型 再開発等により整備した施設を管理運営
公共施設整備運営型 公共施設等の効率的整備、適正な保守運営
まちづくり市民活動型 居住環境の整備、地域資源保護の推進
出典)全国商店街振興組合連合会編:商店街とまちづくり会社との協働

また、ハード、ソフト事業の機能としては下表となる。

ハード事業 事業内容、機能
施設整備 商業施設整備、住宅整備、福祉施設整備、駐車場整備等
公共施設管理運営 維持管理、指定管理者等
民間施設の管理運営 商業施設の管理運営、オフィスビルの管理運営等
空き店舗管理運営 空き店舗の斡旋仲介、空き店舗利活用等
ソフト事業 事業内容、機能
地域交通利便性向上 コミュニティバスの運行、レンタサイクルの運用、共通駐車券
店舗、サービス運営 店舗の直接経営(物販、飲食、サービス店)、カルチャーセンター
イベント企画 賑わい創出のイベント企画・運営等
情報発信、広告宣伝 広告受託、Web発信、コミュニティ誌の発行
コンサルティング 調査、マーケティング、経営支援、販売促進
事務受託 行政等からの事務受託、(税務以外の)経理受託
人材育成、人材派遣  講師派遣、専門家派遣
地域貢献 防災、防犯活動、清掃、美化・緑化事業  地域貢献 防災、防犯活動、清掃、美化・緑化事業

3.商店街の機能
 今日の商店街の機能は、個店の商品やサービスの提供に加えて(利益を出して個店が継続しながら)、今後地域住民から支持されるためには次の機能が加わりの期待が大きくなっていると思う。
[1]イベント開催
[2]地域住民と商店街の人が触れ合える大型店にはない情感が漂う場
[3]集える場
[4]共同販売、販売促進活動
[5]大型店や郊外店、FC店にはないわくわくする場

4.まちづくり会社と商店街との連携と役割分担
 以上から、両者が連携できるものが相当ある。ただし、それは地域住民のニーズとまちづくり会社及び商店街の運営事業が上手く合った場合である。
 例えば、まちづくり会社が行政から委託を受けたイベントについて、その時期や内容を勘案して、イベントと商店街の共同売り出し連携するとかである。また、市民の生涯教育として行政が企画した歴史教室を商店街の空き店舗を使って運営することも有効である。
 役割分担としては、まちづくり会社はマネジメントがしっかりしていて、専門家が所属していたりネットワークもある。そこで商店街の経営支援に入るなどして役割分担を明確にする事業も多くある。
 特に、ソフト事業におけるまちづくり会社特有の機能を次に列記する。
・経営支援(コンサルティング)、情報収集、各種施設の管理(指定管理者)、交通関係事業

5.どのように診断、助言を行うか
 以上から、中小企業診断士として診断・助言の支援を行うのに次のようなことが浮かび上がってくる。まずは地域特性や住民のニーズを把握することが根本である。その上で、まちづくり会社や商店街に必要な機能にある程度は焦点が定まるからである。この分野は本来は機能提供者が先にあるのではなく、機能を使う側のつまり機能需要者のニーズを探ることが肝要と思っている。
 私は、平成24年度に地元の行政の機関であるまちづくり推進センターの依頼を受けて、上記の考え方を説明して理解して頂き、地域住民と商店街の経営者の両者の意識調査を行った。すると、両者のギャップが浮き彫りになった。何といっても地域住民の商店街に対しての評価があまりにも歴然と出たからである。一方、商店街の購買機能に求めるものも際立っていた。それは、メガネや時計は他の商品と違って商店街に求める比率が高かったのである。確かに、調整や修理の機能も必要な商材である。家電や衣料品店が激減している中で、しっかりと残っている。住民のニーズなのである。そして、商店街の役員や組合員にその結果についての報告会も実施して今後の経営や商店街活動に参考にしてもらった。僭越であったが私の支援例を若干紹介した。
 その上で、まちづくり会社と商店街の連携・役割の診断・助言であるが、最優先事項は、両者の経営者や役員の人間関係がどうであるかである。ヒヤリングを行ってみればすぐにわかる。信頼関係があれば次の段階に進むことができる。信頼関係が無ければ何故無いのか、また、その構築のためにはどうしたら良いかを探らなければならない。
1)両者の信頼関係がある場合
 特に、まちづくり会社の設立経緯、行政等公的機関との関係、事業内容、財務内容、保有している人材の専門性等から、強みや弱みを顕在化させ今後の事業計画との整合性について診断する。
 助言については、基本は公的機関や商店街との定期的なコミュニケーションを継続しながら人的ネットワークの維持・拡大を図るようにしてニーズを把握する。また、戦略として行政の方向性を視野にいれながら、強みを伸ばすのか弱みにテコ入れするのかを会社の経営資源との関係を見ながら助言する。
2)両者の信頼関係がない場合
 まず、これをどうやって構築するかの要因を探りながら診断する。過去の事業の失敗なのか、人間関係上の性格なのかなどいろいろある。しかし、目的は一緒なので妥協点や一致点があるので、ここは担当する中小企業診断士の人間性や本気度も含めて試される。信頼関係という“土づくり”が兎にも角にも最初である。そのための助言という方程式は無いと思われる。まさに中小企業診断士の力量そのものである。

設問(2) これからのまちづくりにおいて、国および地方自治体の施策はどうあるべきか、自己の見解を述べよ。 

 本論では、地域住民のニーズが基本であると強調している。これは私のこれまでのコンサルティング経験の中から発している。誰もが異論は挟まないと思うが、重要なのはその方法論である。本テーマでは、中心市街地活性化法に基づく中心市街地活性化協議会にてニーズの把握ということがあると思うが、この場で如何にその地域特性を反映しているかである。まさに平成25年6月に産業構造審議会の中心市街地活性化部会が「中心市街地の再活性化に向けて(提言)」で次の課題を呈している。
[1]理念の共有不足
[2] 住まい手が主役であるという目線の弱さ
[3] 中心市街地外の住まい手等の支持の不足
[4] 施策の厚みの不足
[5] 基本計画に規定すべき4つの要件の充足に係る課題

 経験的に特に[1][2]及び[3]には私も同意する。ゆえに、地方自治体の最重要施策はまちづくりの理念の構築と共有をするための動きである。これがないから地域住民は「どうせ役所や偉い人がやっているから」というような他人事になっている。自分たちのまちづくりという空気感を充満させる施策である。例えば、より広く中心市街地活性化協議会に参加を求めるとか、公民館などに出向いて意見交換を行う施策である。
 例えば、私の地域では高齢化が全国平均より進んでおり、買い物が不便であるという声が沢山あるのに、それに類した事業が「中心市街地活性化基本計画」には盛り込まれていない。
 まちづくりの理念が共有されて、それを具現化するための具体的な施策が生きてくる。そこには、平成27年度にも中心市街地再生事業費補助金などハード、ソフト面の施策もある。平成28年度予算案にも地域・まちなか商業活性化支援事業が計上されているので、手段としての施策については特に大きな問題はないと思われる。
 繰り返すが、地域の行政としては上記の[1][2][3]の課題解決のために、例示したような具体的施策を期待したい。

以上




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