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平成29年度 テーマ2:サービス業の生産性向上支援


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論文 テーマ2 『サービス業の生産性向上支援』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


テーマ2

 「サービス業の生産性向上支援」について、中小企業診断士が対象とする中小・零細企業のサービス業における生産性を向上するには、人と設備の2つの視点があると考えられる。この2つの視点でどのような生産性向上支援を提案すればよいかについて述べる。

1.はじめに

 サービス業の生産性の定義については、平成27年1月に経済産業省が発表した「中小サービス業の生産性向上のためのガイドライン」の次の考え方による。
【1】1人あたりの付加価値額=(営業利益+人件費+減価償却額)/従業員数(または労働時間数)
【2】生産性向上=付加価値額/効率

 【1】、【2】とも製造業では当たり前のことであり日常的であるが、中小零細サービス業としてはその意識が薄いと言わざるを得ない現状である。サービス業の特徴として、顧客に提供する製品(サービスのこと)の在庫というプロセスがほとんど存在しない業態であり、どうしてもその場その場で対応して次の場面に繋がらないことも多い。その要因もあって、どうしても生産性が低くなってしまう傾向にある。
このような認識に立って、テーマに沿った“人”、“設備”に焦点をあてて生産性向上の提案を行う。
基本的には、上記@、Aの算式に従って、分子を如何に大きくするために何をすべきか、または如何に分母を小さくするべきかで、生産性向上を論じたいと思う。

2.“人”の視点において

(1)経営者
 規模の大小を問わず、経営者は必ずいる。まずは“経営者”という人に焦点を当てたい。経営者の意識や言動が生産性に大きく影響を与える。
大原則は上記の@であれば、分子の利益を増やすことが第一番目である、人件費の増加と利益はトレードオフの関係なので、一概には言えないが可能な範囲で給料を増やすことが、モチベーションの向上にもつながり生産性と相乗効果の期待もできる。また、分母であれば、今日的には効率的な働き方をして、時間当たりの分子(付加価値額)を増やす取り組みが肝要である。まさに、サービス業には働き方改革が求められる。
それらの先頭に立つのが経営者である。具体的な提案を次に述べる。

1)業務プロセスの明確化の提案
 一般にサービス業は“人”の力量に依存したプロセスの運用が他の産業に比べて顕著である。
これは、前述したような在庫も持つことが出来ないことや、サービス業の場合は顧客が“人”であることも多く、顧客の要望が多岐にわたるので、それに対応するためにはやり“人”の力量の幅が重要となる。そのために業務プロセスの明確化というより、“経験や資質”に重きを置いてしまう傾向にある。それも大事であるが、当該事業所が提供するサービスのプロセスの明確化して、従業員に周知することである。それによって提供するサービスの品質が均一化され、顧客から見ると、「悪い人にあたってしまった」と言う事が極小化できる。
原則として決めた業務プロセスをフローチャートやマニュアルにして標準化して社内周知することが重要となる。もちろん、顧客や状況によっては例外もあるが原則としたプロセスを社内で順守するようにすることが経営者の重要な責務となる。
また、業務プロセスを決めておけば、問題点となるプロセスや改善すべき業務も浮かびあがり易くもなる。
これは分子、分母に貢献するが、Aの式であればどちらかというと分母に貢献する方が多いと思われる。

2)事業コンセプトの見直しや再定義の提案
 地域の中小零細サービス業は経営者自身の職業経験を踏まえて創業したケースが多く、どうしても経験知で事業を行っている傾向が多く見受けられる。ゆえに、誰のために、何のためにとかの原点が潜在化して、それが社員にも伝わっていないことがある。これでは、伝えるべき顧客が曖昧になり、目的観もぼやけてしまう。経営者はこのことを常に意識して、当社の事業目的、誰のために、何を、どのようなサービスを提供すれば適切なのかを考え続けなければならないということである。しかし、それは顧客のニーズの変化や技術の進歩等も踏まえて常に変化していかなければならないことも認識する必要がある。
例えば、地元の美容院として店舗を構えて経営を継続してきたが、地方特有の人口減少、高齢化等を勘案すると店舗に来たくても来られない高齢者がいるとの情報が入って、それなら車両を改造して理美容機材を積んでいわゆる移動式の店舗でサービスを開始した経営者がいる。この例はまさに、自分の事業を固定した店舗にこだわらず、移動式にして事業コンセプトを見直して再定義化したと言える。
これは特に分子の増加に貢献する。

3)業務プロセスに連動した計画的な社員教育の提案
 その場当たり的な教育では意味がない。重要なのは、事業コンセプトに基づいた明確にした業務プロセスに連動した計画的な教育が必要である。業務プロセスが明確であると、当該プオセスに必要な力量が明確になる。明確になった力量から現在の力量とのギャップが明確になり、そのギャップを埋める教育内容が明確になる。それを計画的に行うことによって当該プロセスの力量が高まり、分子に貢献する。また、効率的に業務がこなせるようにもなるので分母にも貢献する。

4)社員の力量が増大するような社内の仕組みの構築・運用の提案
 “人”という資源は、他の設備等の資源と違って“減価”するのではなく“増価”する視点に立たないと生産性向上につながらない。しかし、そのためにはそれなりの管理手法が必要である。それは“評価”制度であり、それがモチベーション向上につながり、力量向上になっていくからである。評価制度は、難しく考える必要はなく慣例や依怙贔屓にならないで、頑張った人には報いるように、そして頑張り続けられるようにする制度である。具体的には、力量評価項目、その基準を明確にして、面談をして本人もフィードバックして、社員と企業の信頼関係を強化する必要がある。


(2)社員
1)業務プロセスに必要な力量の獲得の提案
 サービス業は“社員”がサービスを行うことが多い。その社員の質や力量がサービス品質を決めると言っても過言ではない。前述の業務プロセスに連動した社員教育とは、必要な力量の明確化と現状のギャップを埋めるものであるが、それを社員も自覚や認識をすることが非常に重要である。

2)それ以外の力量の獲得
 そうとは言っても、フローチャート的やマニュアル的に仕事を行えば良いというものではない。前述の美容院の例では、単に理容師としての力量の他に、顧客の気持ちや心理状況を読み取る力量、相手の立場になって考える力量、そしてその場に応じたコミュニケーションスキルやプレゼンスキルも重要である。
これらの直接的スキルと間接的スキルも総合性が顧客満足につながり、生産性の分子に貢献する。ゆえに、社員が直接的スキルの獲得のみならず間接的スキルの獲得にも同様に努力を傾ける必要がある。
経営者としては、業務プロセスと直結する直接的スキルの獲得の支援の他に間接的スキルの獲得にも支援する必要がある。
また、それらを評価する仕組みがないとモチベーションに繋がらないので、経営者が取り組み一つとして前述の力量の増大を支援する制度である。

3.“設備”の視点において

 あらゆる面で技術革新が進み特にIT関連や人手不足を補うような側面からもサービス業も色んな設備でプロセスを支援する視点が不可欠となってきた時代である。ここでは具体的提案事例を挙げながら述べる。そして、設備は生産性の分子、分母の両方に貢献する。
1)移動式車両で
 前述したように高齢者が店舗に来にくいとの声から、美容業者が移動販売車からヒントを得て車両を改造して理容器具やシャンプー設備も積み込んですでに稼働している。これには政策金融公庫も理解を示して融資に応じてくれた。また、最近は介護施設からも声がかかり、入居している高齢者が順番待ちで利用してくれているという。
2)タブレットで
タブレットは携帯できるパソコンなので、通信機能も活用して、顧客情報等の情報の共有化を図りコミュニケーションの円滑化や効率化を実現している。これはサービス業のみならず製造現場に入りつつあり、紙ファイルに代わるツールとしても活用が進展している。
3)各種予約をWebで
ホテル、スポーツクラブ、交通機関など、電話に代わってWebでの予約、確認、変更が日常的になってきた。これはほぼ24時間稼働が可能で、非常に生産性が高まったといえる。しかし、高齢者を中心に不慣れな人もいるので電話でのサポートも並行していることが多い。
4)ホテルのチェックイン、チェックアウトで
チェーン化したホテルを中心に、人で行っていたチェックインやチェックアウトを機械で行うところも増えてきている。これには専用のカードやクレジットカードが必要であるが、事業者側にとっては労働時間の短縮や顧客側にとっても待ち時間の短縮で生産性が高まったといえる。
5)介護サービス現場で
現実的な介護ロボットの登場は少し先であるが、介護員の労力を減らすためにも入浴設備等の導入が進み最近はサポートスーツ等も出来てきている。
6)歯科分野への3D画像の導入による治療
これまで、歯科というと2次元の画像での診断に基づいた治療であったが、CTで3D画像化して、平面では分かり難いところを立体化して、分かり易くより見える化して患者に説明することも可能になっている。

4.まとめ

 第3次産業に従事する就業者数が7割を占める日本において、サービス業の生産性向上は非常に重要なテーマであると言える。製造業はグルーバル競争の中で生き残りをかけて生産性向上の観点で非常な努力を重ねてきた。サービス業はグローバルというよりは国内や地域内での競争であった要因もあって生産性の観点での意識が不十分であったと思われる。
今後は経営者を中心に規模の大小を問わず冒頭の【1】、【2】の算式を意識して業務にあたることが肝要と思われる。

以上






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