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平成30年度 新しい中小企業政策の動向


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平成30年度 テーマ1  『新しい中小企業政策の動向』

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士  本多 喜悦


平成30年度 テーマ1  『新しい中小企業政策の動向』

設問(1)日本企業の労働生産性の低さが課題である。あなたの知見のある業種・業界では、どのような理由で生産性が低いのか、それを解決するにはどのような方法があるか。中小企業診断士としての考え方を述べよ。


1.はじめに
日本の生産性の低さについては論題の通りであるが、具体的には2018年版中小企業白書によれば、OECD内で21位(労働生産性)に位置している。因みに、日本とアメリカの2010年と2016年を比べてみる。
一人当たりの実質労働生産性(単位:USドル)(構成比はアメリカを100とした場合)

  2010年 構成比 2016年 構成比 伸び率 増加率
日本 71,165 66 8,177 66 14.9% 10,612
アメリカ 107,608 100 122,968 100 14.3% 15,378

時間当たりの実質労働生産性(単位:USドル)(構成比はアメリカを100とした場合)

  2010年 構成比 2016年 構成比 伸び率 増加率
日本 39.5 64 46.0 66 16.4% 6.5
アメリカ 61.9 100 69.6 100 12.4% 7.7
(出典:OECD加盟国の労働生産性)

“一人あたり”及び“時間当たり”の伸び率は日本の方が高いが、増加額は小さく中々その差が縮まらない状況である。そのためにOECD内の順位も“一人あたり”及び“時間当たり”の両方とも20位前後で変わらない状況である。
また、同白書によれば小企業の労働生産性(製造業)は中大企業の約6割でその伸び率も大企業と比べると低い状況である。(2009年→2016年において中小企業9.6%増加、大企業32.1%で、格差が増大している状況である。
その要因は、複数の事柄が相互に絡み合っての複合要因であり、私が日常的に支援している中小企業の電気部品業界でもそのような状況を感じることが多くあるので、次に論題に従って考察する。


2.生産性の低い理由
(1)経営陣の生産性を高めるイメージが弱い
生産性を高めることは、単に売上の増加、経費の削減という決算書の科目に働きかける取り組みではなくて、まさに複合的要因によることから経営者から見ると分かりにくいと思われる。そのために(売上を上げる、外注を減らすなどという直接的な経営手段を取りやすいこともあるが)中小企業の経営者が具体的イメージを明確にすることがなかなかできない状況である。
生産性は付加価値と同義で、如何に社内のプロセスを有効に効率的に運用した結果となる。そのために一朝一夕には実現できす数年のスケジュール感で社内の生産性向上の取組みを行わなければならないので、まずは自社に相応しい生産性向上ための方策のイメージを確立しなければならないが、その意識が不十分であると言わざるを得ない。

(2)生産性向上について社内の価値観の共有やベクトルが統合されていない。
生産性はまさに利益を出し企業継続の根本の一つであるが、経営者のイメージが明確でないために、社内がそれに向かって取り組みが弱いとことがある。そのためにこれまでの同様な売上○%増加、原価○%削減といい目標を設定して取り組むことがある。これらが達成されれば、結果として生産性も高まるのであるが、それを原単位化したときに、労働生産性、時間生産性がどうなったかである。
ゆえに、結果としての生産性ということではなくて、自社に相応しい生産性を高めるには何に取り組むべきかということ考え方が不十分ということである。その要因は取りも直さず経営者のイメージが具体的でないからである。

(3)中間管理者が生産性向上のために取り組む力量を獲得していない。
経営者の指示やイメージを具体的に実務的に具現化するのが、中間管理者であるが生産性向上の切り口から管理する力量が不十分な面がある。
労働生産性=一人あたりの付加価値額なので、まずは如何に効率的に生産するかによる。
また効率とは何かであるが、その意味を明確に理解していないこともある。効率を一般化すればアウトプット/インプットである。なので、効率を高めるにはインプットを小さくするかアウトプットを大きくするか、あるいはその両方である。インプットには材料の他に、“時間”や“人”も当てはまる。生産性はインプットとしての時間や人を如何に小さくすることでこれが効率であることを十分に理解していないことが見受けられる。
また、効率に似て非なるもので有効性がある。これは、成果/期待の結果であり、如何に役に立ったかである。
これらのことを中間管理者が良く理解して、自部門の管理を当たらなければならないが、その力量が不十分であることが要因の一つである。

(4)各プロセスが有機的に効率的に機能しておらず、標準化も進んでいない。
製造業は製造した製品を売ってはじめて売り上げとなり付加価値が創出される。プロセスを校正するのは、単純に言って4Mであるが、ここでは材料を除く、人、設備、方法について中小企業の生産性が低い要因について述べる。

1)人材育成プロセスの脆弱性
実はこれが一番大事なことである。しかし、中小企業では代わりの人がいないとか、時間が無いなどの理由で、優先順位が低くなることが多い。
人材は、社内のプロセスの運用や改善、効率性の向上のための生産性に関わる最重要資源だからである。本当は一番大事にしなければならないプロセスをないがしろにしている傾向にあると思われる。根源的には経営者の考え方であるが、自社の求める人材像を明確にしていないことが要因である。将来の人材像を明確にしていないがゆえに、どのように育成したら良いかが不明確になっているという悪循環である。それと評価・処遇システムも不明確である。期待する人材像と現状の力量評価した結果のギャップを埋めるのが育成システムで支援するのであるが、それらのシステムが確立されていなかったり有機的に機能していないことで、人が育たずモチベーションも上がずで、生産性に悪影響を及ぼしているということがある。

2) 設備更新期間が長い
日本経済新聞2017年11月12日によると設備年齢として大企業6.4年、中小企業8.5年であり、1990年比で大企業は1.5倍長く、中小企業は2倍長くなっているとの報道があった。生産性向上のためには設備は新しい方がその確率が高い。設備年齢が長くなっている要因としては、自社の将来像が描けない、(ITを絡ませた)設備の目利きができる人材が育っていない、デフレが長く続き低金利であっても借入金が多くなることの懸念を感じていたなどがあると思われる。

3)業務プロセスの見直しが進んでいない
業務プロセスは、経営計画、人材の変容、設備導入、アウトソーシング、コアコンピタンスへの注力等で業務プロセスを見直す必要がある。中小企業の場合は、これまでの通りのことが多く、意識的に業務プロセスの見直しや改善を進めていないことも生産性を阻害している要因である。


3.解決する方法
以上の要因を踏まえて、電子部品製造業(属性:従業員100人ほど、創業して30年以上、創業者が現社長、オーナー経営で外部株主有り)の例を挙げて、低い生産性を高くするための方法を述べる。
(1)経営陣への働きかけ
電子部品はグローバル化が進んで、しかも新興国の追い上げも厳しく、非常に激しい競争にさらされている。ゆえに、スピード感のある意思決定や行動が求められるが、そのようなポジションにある中小企業にとっては、コアコンピタンスを明確に位置付けて中期的計画を礎に日々に意思決定するように働きかけている。また、上記のような属性の企業であるので、社長の独善にならないように、定期的に面談して外部からのプレッシャーや刺激が常にあるように情報の伝達や緊張感がある程度維持されるように、リスクや社内の課題について意見交換を図っている。特に、昨今は生産性に影響のある如何に早く作るか(リードタイムの短縮)をテーマとなっている。

(2)生産性向上について社内の価値観の共有やベクトルが統合化に向けて
これは、社内コミュニケーションの課題もあるが、まずは社長が“生産性向上”という錦の御旗を掲げた後になる。経営陣・管理者・般社員の組織の各階層への周知、見える化を行って、地道にその取り組みをコミュニケーションすることが肝要である。
具体的には、例えば目標展開として、単なる原価○%削減とかばかりでなく、リードタイムの短縮なども含めた原単位化した生産性(時間当たり等)の指標の設定も伝えている。
支援として、以上について幹部会議等に出席して必要に応じて管理者に伝えている。

(3)中間管理者の育成
一番の課題は社長がその必要性をあまり感じていないことである。売り上げ、利益がそれなりに出ているので、これまで通りで良いとの考えが強いと思われる。今日の延長線上に明日があるとは限らないのがグローバル競争での電子部品業界である。
社長はたたき上げでここまで来たが、次代を担う管理者は経験の他に知識や新たな人脈づくりも必要である。なので、OFF−JTを中心に将来のビジョンの実現に向けて必要とする管理者の育成を中期的視点で提案している。別の企業の例である国内大学へ社会人入学、社長の人脈で大手同業他社への出向等も紹介して促している。
その他に、社員全員に対する評価制度、処遇制度と関連させた教育訓練制度も提案した。

(4)業務プロセスの改善
上記の要因から、社長自身というより、ナンバー2的(専務、常務等)な経営者が常に業務プロセス(例えば、受注―生産管理―製造―検査―納品)を常に監視して、この設備を導入すれば、プロセスAとプロセスBが統合され効率化が図られるかなどを常に監視、シミュレーションすることが肝要と思っている。 
それらを色んなコミュニケーションの場で発信して意識を持つようにしている。


4.まとめ
生産性向上は1年で出来ることはなく、管理実力として備わったり結果が出るようには複数年はかかるとの経験的なものがある。しかし、中小企業には生産性向上の宝が埋まっていると思っているので、私としては出来る限りその向上の支援をしていきたいと思っている。

以上






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