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中小企業診断士 資格更新論文

平成27年度(2017年) テーマ1「新しい中小企業政策の動向」

 

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士 本多 喜悦

※ 掲載論文の無断転載、無断使用はお断りしております


設問(1)戦略的連携のタイプ(あるいは種類)を1つのみ取り上げて、それが成功するための要件を解答者自身の診断・助言等に基づいて述べよ。

1)連携企業の属性
取り上げる戦略的連携のタイプは資本提携とする。大まかな属性としては次のとおりである。
A社:私が助言した中小企業であり、主に電子部品の開発、製造、販売を行っている。今回はB社から第3者割り当て増資を受けて、資金調達、開発費の調達、販路の拡大、人的確保を目的とした。
B社:分類からすると大企業の公開企業であり第3者割り当て増資をA社に行って、A社をB社が新製品を販売するための供給元、A社の部品を使った応用製品の共同開発を目的とした。

2)提携の背景 ここからは、助言先であるA社を中心に述べる。
A社は、以前は下請けの電子部品製造会社であったが、社長の志でメーカーになっていくつかの自社製品の開発、製造機能、販路を強化して一定の成長をしていた。しかし、どちらかというとローテク製品でコスト勝負の電子部品であったので、御多分に漏れず中国等の振興国の追い上げで利益が出にくい状況が見えていた。
そのためコストダウンや品質の均質化の観点から、製造設備の自動化を進める開発や全く新しいコンセプトの製品開発に着手して、徐々に成果が出てきて、新たなステージに入っていた。しかし、それらに投じた開発費用やその回収までの資金が不足気味にもなった。
一方、B社はA社から一部製品を仕入れており、B社の社長は取締役時代からB社の社長とはお互いに行き来しており、気心はある程度分かっていたという。B社は大企業で公開企業ではあるが、電子部品では新たな革新性をもった製品を出せないでいた。しかし、B社の社長はA社が完成させた新製品に興味をもちA社の販路にバッティングしないで自社の販路や新たなアプリケーション製品にも応用できるのではないかとも感じていたという。
このような状況で、A社の社長が提携を持ちかけて結果として、A社への増資と開発要員と経理要員の出向も含め提携となった。
お互いの得意な資源を持ち寄って(A社:自動化による製造力、部品単体の開発力、B社:販路、応用製品の開発力)、資本提携という強い連携となった。

3)成功するための要因
【1】経営者同士の強い信頼関係
何といっても、社長同士のお互いの強い信頼関係があったからである。提携前にA社の社長から「乗っ取られるかもしれない」との発言もあったが、資本金の1/3以下の比率で、A社長の親族等の株式保有比率の関係やB社の社長とも何度かお会いすると、そのようなリスクはあまりないように感じたので、その旨を伝えた。
それからも何度となく社長同士がコミュニケーションを重ねて取締役会等の会社法の手続きを経てB社からA社への出資、B社開発社員のA社への出向等となった。
【2】明確な提携の目的と具体的な取組み
提携が目的ではなく、提携は手段であり何のために提携するかを明確にする必要がある。前述のように、A社は自動化による製造力、部品単体の開発力の得意分野があり、逆に資金が不足、応用製品の開発要員の不足、販路の行き詰まりがあった。一方、B社は、ある程度内部留保があり、販路、応用製品の開発力もあった。この姿は、一般的な中小企業と大企業の経営資源の保有の違いでもあった。
そこで、両者のSWOT分析を実施すると極めてお互いの補完関係が成り立ち、明確な目的を設定することができて、良いスタートが切れた印象であった。
【3】人的なつながりの強化
経営資源が豊富なB社から経理要員1人、開発要員1人の出向があり、A社の管理体制の強化や開発力を増強した。また、B社の社長からA社の取締役に就任して頂きいわゆる社外取締役として大所高所から毎月取締役会等で助言を頂くようにもした。
これによってB社の取締役会も変わってより有意義な時間となった。このような提携は資本の提携のみならず実務や取締役会の変革のきっかけとなり、人的つながりが特にA社にとって有益であった。
【4】獲得した競争優位性 以上をまとめると本事例の提携で獲得した競争優位性は次のようにまとめられる。

資金 開発力 販路 販売製品 管理力 製造力
A社
B社
両者の優位性

記号の説明:>:有益であった、―:特に該当せず、↑:優位性が高まった

【5】今後の課題 今回の例は、お互いの不十分な機能を補完し合ってウィン・ウィン関係の構築の仕組みが出来上がったと思われる。ここまでは成功であると言えるが、今後はこれらを継続改善してお互いの成果により繋げることが必要である。 A社の直近の決算は増収増益であったが、B社にしては相対的にまだその効果が小さい状況である。A社にとっては大企業の良いところを学ぶには絶好の場面であるので、これをさらに業績に反映するように役員が肝に銘じる必要がある。

 

設問(2)戦略的連携を支援する国・自治体の施策を解説せよ。

ここでは、国の施策を一つ、筆者が活動する山形県の施策を述べる。

1)国の施策
戦略的基盤技術高度化支援事業:デザイン開発、精密加工、立体造形等の特定ものづくり基盤技術(12分野)の向上につながる研究開発、その事業化に向けた取組を支援することが目的である。中小企業・小規模事業者が大学・公設試等の研究機関等と連携して行う、製品化につながる可能性の高い研究開発及びその成果の販路開拓への取組を一貫して支援するものである。
補助事業期間は2年度又は3年度であり、補助金額(上限額):平成29年度(平成30年3月まで)に行う研究開発等に要する補助金額の合計が、4,500万円以下で、大学・公設試等(補助率:定額1,500万円以下)、中小企業・小規模事業者等(補助率:2/3以内)である。

2)自治体の施策(山形県)
【1】産学連携事業 (山形大学国際事業化研究センター):山形大学国際事業化研究センターは、大学が有する研究シーズ、研究開発力、そして人材 育成の機能を企業に提供する橋渡しを行うものである。専任スタッフやコーディネーターが窓口となり、内容によって、大学の適任者(研究者、技術職員等)や関連機関を紹介する。案件によっては、共同研究や受託研究等の紹介も行って連携を支援するものである。
【2】有機エレクトロニクス分野における共同開発支援:山形大学との共同により、有機エレクトロニクス分野(有機EL、有機トランジスタ、有機太陽電池、蓄電デバイス)の共同開発を行う企業に対する経費の一部を支援(補助限度額) 150万円(補助率1/2) するものである。
【3】山形県企業間連携促進事:県内で事業を営んでいる中小企業がグループを組織して行う企業間の連携による共同受注・新商品開発、販路開拓等といった取組みを支援することで、成長分野6分野へ の参入や取引拡大を推進するものである。
【4】新連携(異分野連携)の支援:異分野の中小企業と連携して行う新商品、新サービスの開発等に取り組む中小企業者に対して、法的措置や予算措置、金融措置などにより総合的に支援するもので、新たな事業活動に取り組もうとする異分野の中小企業者(2者以上)であって、中小企業等経 営強化法に基づく事業計画を作成し、国の認定を受けた者に支援する。
【5】企業間連携支援事業:2社以上の中小企業が連携して行う成長分野等へ参入する取組みや取引拡大に向けた活動を支援するものである。複数の企業が連携して行う、共同受注・ユニット化による取引の拡大や販路開拓に向けた活動 に必要な経費の一部を補助するもので、対象経費としては、 企業グループの運営に係る経費、外部専門家の招聘経費、共同研修に係る経費、ターゲット市場のニーズ把握のための経費、広告宣伝費、展示会等の共同出展経費等、補助率は1/2以内の上限50万円となっている。

以上

 

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