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中小企業診断士 資格更新論文

平成20年度(2008年) テーマ2「小規模企業支援のポイント」

 

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士 本多 喜悦

※ 掲載論文の無断転載、無断使用はお断りしております


平成20年度 テーマ2『小規模企業支援のポイント』
創業希望者に対する創業計画作成についての重要なポイント

1.経営者としての意識の向上のために創業希望者に対する創業計画作成についての助言で重要なポイント
(1)ビジョンを明確に
 創業計画を立案するにはこれが一番重要となる。これが明確にならないと創業希望者のフットワークが悪くなるからである。助言する場では、色んな質問を行ってそれがどの位明確かを確認する必要がある。もし、不明確な面があれば、創業希望者とやり取りを行って、創業希望者が意志決定出来る範囲で助言を行う。決して創業希望者と分不相応な助言を行ってならない。
 具体的には、例えば日常の5年後の成功の姿はどんな形かなどを質問して、それが明確に適切な範囲で説明が得られれば、創業希望者のビジョンが明確になっていると判断される。
(2)意志の確認
これも計画を作成する上で重要である。どの程度本気に考えているか、情熱はどの程度かを確認して、もしあやふやであれば意志を固める助言を行わなければならない。これから始める分野でもすでに事業を遂行している人がいるので、生半可な気持ちで創業することは、色んな人に迷惑をかけることになる。そのあたりも助言の範囲となる。
ここでのポイントは意志や情熱の確認と、一方ある程度の冷静さの両方を持つように助言することである。
(3)経営理念、経営方針の設定
 以上のことが確認されたら当該事業を営むための礎となる経営理念、経営方針の確認である。もし、それを考えていないとすれば創業希望者の創業動機、社会の見方、人生観、職業観を確認して、理念や方針の設定の助言を行う。時には公開されている他社の例を示しながら助言しても良いと思う。
(4)顧客と製品(サービス)の明確化
次に顧客の明確化である。誰に何を売るのかということを確認して、これが不明確であれば、創業希望者とやり取りを行って明確にしていく助言を行う。これが当たり前のようだけれどなかなかはっきりしない場合もある。これまでの例では、顧客は個人なのか事業所なのかがはっきりしていなかったこともある。これは売上を計上する大事なところなので色んな場面を想定して創業希望者とやり取りを行う。
(5)SWOT分析
 これは、創業希望者に創業する事業やポジショニングの状況を客観的に理解してもらうために強み・弱み、機会・脅威分析を行って助言を行うものである。例えば、高齢化が機会なのか脅威なのかを事業内容と本人の感覚を踏まえて、第3者としての中小企業診断士の助言を行う。これは一見簡単そうであるが実は結構難しい面があるので、そこを中小企業診断士は適切に助言を行うことが重要である。
(6)当該事業に関しての専門性、経験
創業するのに十分な専門性なり経験があれば問題はないが、それが不足しているとすれば、顧客の立場から助言を行う。
(7)事業形態(ビジネスモデル)の明確化
 以上から、創業希望者の事業形態の全体像を描いて、それが妥当な範囲かどうかを確認する。それに懸念があるようではどこかに無理があるのでそうならないように助言を行う。
(8)家族の同意
 既婚者であれば配偶者の同意、独身者でも両親等の家族の同意があるかどうか確認する。助言としては、同意があった方が創業後の応援も得られることからできれば賛成してもらうように助言する。
(9)支援機関の紹介
 創業希望者へ複数の人から助言をもらった方がよいことがあるので、支援機関を紹介することも大切である。公的な支援機関は次のものがあることを伝える。
・地元の商工会、商工会議所
・中小企業・ベンチャー総合支援センター
・地域中小企業支援センター
・地域力連携拠点
(10)事業主体
 事業を進める主体として、個人事業所と法人化がある。両者のメリットなど特徴を助言してどのような主体で始めるか助言する。
 例えば、個人事業所として始めるのであれば税務署に「開業届」を提出すればすぐにでも開業出来るが、法人は定款の作成、公証人役場への提出・認証、法務局への登記など時間がかかることも助言する。

2.具体的計画書作成のために
(1)目標の設定
 次に具体的目標の設定である。具体的には、売上計画、仕入れ計画、一般管理費など損益計画にかかる数値目標を立てる必要がある。それが妥当の範囲になるように助言をおこなうことが重要である。
 創業希望者は時に自分の考えのみに埋没していまい、客観的に物事を見られない場合もある。その際に、中小企業診断士が、第3者として、顧客として、金融機関の担当者としてなど、いろんな立場から質問や助言を行って、目標設定に支援を行うことが重要である。
 以下に個別の分野における助言の内容を述べる。
(2)売上計画
 次のことを明確になるように助言を行う。
項目 助言内容
だれが 必要な売上を達成するために、本人、家族だけでよいのか、従業員を必要とするのかを助言する。
だれに 前述のように想定する顧客は誰なのかを明確にするように助言する。
何を 想定する顧客に対して何の商品・サービスを売るのかを明確にかつ妥当になるように助言する。
どのように 想定する顧客に製品・サービスをどのように提供するかを助言する。
販売条件 現金なのか掛け売りなのかなど、妥当な販売条件を助言する。
(3)仕入れ計画
仕入は販売や利益にも直接影響する項目なので、何をどこからどんな条件で仕入れるかを必要に応じて助言する。
(4)資金計画
ここでは、必要な資金の考え方の助言を行う。運転資金と設備資金の仕分け、その調達について確認を行い助言を行う。また、調達については自己資金をなるべく多く用意すれば周りも支援する気持ちが出てくるので、できれば3割ぐらいの自己資金は用意してもらうように助言する。また、金融機関以外からの調達として親戚、知人からの借入が出来れば信用面が高まることを助言する。
金融機関からの借入の場合は、政府系金融機関、民間金融機関の違いや特徴を伝える。決して高利金融からは借りないことを約束させる。
(5)収支計画
 創業希望者から見れば、新しく始める事業がどのくらい利益が出るかが気になるところなので、創業後の収支計画についての助言も重要である。
 その作成にあたっては、以上のことを考慮して、売上予想、原価、経費(人件費、家賃等)から利益の算出について助言する。そして、それが創業希望者の納得する範囲であり、中小企業診断士からみても妥当の範囲であれば計画としては良いと言うことになる。
(6)返済計画
 借入金の元金返済は経費にならないことを伝え、利益償還の返済財源は“利益+減価償却費”であることを助言する。その上で(5)の収支計画を見直したりして計画を固めていくことを助言する。
(7)経理の重要性
 創業希望者はどうしても事業を始めることを中心に考えがちであるが、大事なことは数字的な把握を正確に迅速に行う重要性を助言する。いわゆるどんぶり勘定では存続しにくい時代環境であることを伝えて、事業計画で作成した売上、仕入、経費の現状を把握して、つぎの経営管理に役立てることを助言する。
(8)税金について
 事業を行うと新たに発生する税金についても助言する。個人事業所の場合は所得金額に応じて“個人事業税”がかかる。それに通常の所得税、個人住民税、売上1000万円以上には消費税の支払いも発生することを助言する。
 法人については、法人税、法人住民税、法人事業税がかかることを伝える。

3.まとめ
 統計によれば依然として開業率より廃業率の方が上回っている。しかし、創業は地域経済活性化の起爆剤ともなる。それは、付加価値の創出、雇用の増加などの点からである。中小企業診断士はそのことを肝に銘じ、創業希望者の良き相談相手として使命感をもってその実現に尽力しなければならない。

以上

 

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