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中小企業診断士 資格更新論文

平成22年度(2010年) テーマ1「新しい中小企業政策の動向」

 

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士 本多 喜悦

※ 掲載論文の無断転載、無断使用はお断りしております


平成22年度 テーマ1『新しい中小企業政策の動向』
技術革新や新製品を生み出すための組織的な取り組みをどのように行ったら良いか

【1】技術革新や新製品を生み出すための組織的な取り組みをどのように行ったら良いか
1.はじめに
 私の経験では、テーマにあるような技術革新や新製品を生み出す(以下本論文ではこれらを総称して“新しい取り組み”と表現する)ことについて大切でないという中小企業の社長はいなかった。下請け企業でも革新が必要だし自社製品を持っている企業であれば、新製品を生み出す事の重要性を分かっている。問題は、社長や一部の幹部が総論で分かっていても分かっていても、テーマにあるような組織的取り組みができずに、一過性だったり、アイディアや会議の話題だけで終わったりしていることが多いと思われる。
 以上の問題意識から組織的取り組みとして次のことを考える。

2.経営者のその重要性の認識を強く持つ
 経営者は外との交流や情報からその必要性は頭では分かっている。問題はその認識の強さである。経営者の仕事は非定型的な仕事が多く、ランダムに入ってくることもある。経営者が新しい取り組み行うことについてどのような優先順位に位置づけているかある。
 中小企業の経営資源は大企業に比べて非常に少ない。その中で新しい取り組みをおこなうとなると経営者の強力なリーダーシップが不可欠である。大企業であれば研究所や開発部隊が常設されていて、経営者は方針や方向を打ち出せば事業部長→部長→課長→・・・と降りていって開発が進む体制が出来ている。しかし、中小企業ではそうも行かないのである。ゆえに、中小企業は経営者が組織全体に向かって自分姿勢を打ち出すためにも新しい取り組みについての経営者の強い認識が必要である。どの程度の強さかはその内容や組織体制でも異なってくるので一般化は出来ないが、大事なのは社員を鼓舞することや困難に打ちあたったときの言動、事の優先順位等から社員は見ているので、それに見合う経営者の強い意識(思いや志にも似た情感をも含んだもの)が第1に必要である。
 私の支援経験でも、A社の社長も思いが強く働いて下請けからメーカーに業態革新が出来たのは、第一番には経営者の強い意志であったと実感した。

3.方向性の決定と必要な資源の明確化
(1)方向性の決定
 新しい取り組みには、効率的かつ効果的な活動が必要である。特に中小企業は経営資源が十分ではないので、方向性や戦略性が必要である。当たり前の事であるが自社の経営資源と外部資源の活用も含めて、どのような方向が良いのかを決定することが重要である。
これを誤るとその痛手の大きさによっては企業の存続自体も危ぶまれる可能性も出てくる。
この決定にあたっては次の段階のことも含めると組織的合意形成をする必要がある。前述のように経営者の認識は必要だが、独りよがりで決めてもなかなか上手く行かない。具体的取り組み段階になった時は組織全体が同じ方向に向かわないといけないので、組織的合意形成手順を踏む必要がある。
 次に方向性決めるにあたっての一つの手法としてSWOT分析について述べる。この分析は強み弱み分析とも言われ、自社内部の強みと弱みを明確にして、かつ外部環境の変化を機会と捉えるか脅威と捉えるかを分析するものである。同じ事象でもある企業は機会になっても別の企業には脅威となることもある。また、捉え方や評価の価値基準によっても機会になったり脅威になったりする。SWOT分析はそのようにどちらにも振れる可能性はあるが、自社内で議論して方向性を決める際の基礎資料となる。
 そして、それらを経営陣や管理者が共有することによって、組織のベクトルが一致して多少の困難や障害が発生したとしても、乗り越えられる組織となる。
(2)新しい取り組みに必要な資源の明確化
 方向性が決まると、次に新しい取り組みに必要は資源を明確にしなければならない。開発要員、開発資金(設備も含めて)、開発に必要な情報(ノウハウ、特許等知的財産も含めて)、それに開発に必要な時間等である。これらについては開発後に検証すると資金や時間は予定通りに行かないことも多いが、これらが、自社にとってどの程度リスクがるものかを確認する必要もあるので、不可欠な取り組みである。

4.組織体制
 方向性が決まると、次に具体的に新しい取り組みのため活動が大事となる。
(1)開発組織の新設、強化
 新しい取り組みたのめには、経営者は担当部署の新設を決定しなければならない。継続的に行うには、社内の組織図の中に組み込んでいかなければ社員への意識付けにならないからで、経営者の意思表示でもあるからである。
 初めての新設の場合は、私の経験では社長の直轄部署とした方が良いと思われる。その方が開発の意志決定等が早くなり開発が円滑に進む確率が高くなるからである。
 既に開発機能を持っている企業についてもその強化に取り組む必要がある。強化策としては“人”の場合が多く、その道の専門家や開発経験の持ち主を募集して採用して、機能の強化を図るものである。前述のA社でも大手を退職した技術者を採用して開発力を強化した。
(2)開発計画の策定
 そして、継続的に行うには開発計画を策定する必要がある。当初は計画通りに行くことはほとんどないが、組織全体やその要員に周知する意味で策定することが必要である。
(3)アウトソースの活用
 新しい取り組みには、新しい資源(人、設備、資金、情報等)が必要になることがほとんどである。しかし、自社で全て調達できて取り組みというのは、時間もかかるしリスクも大である。そこで、外部の資源を調達出来れば、時間を節約できるしリスクも小さい。新しい取り組みのために何が必要かは前述の段階で明確になっているので、自社調達資源と外部から調達資源を分けて明確にする必要がある。
 例えば、ある要素技術が必要な場合に自社で新たに実験等を行って確立していくか、外部でそのような技術が調達できることがあったら、資金を出して購入するかである。これについては、開発が進んでいくと変更していく場合も多いが計画段階で決めておく必要がある。
 A社では、当初から全ての開発は自社では時間が足りないとのことで、製品開発ではB社、製造における自動機の開発はC社と業務提携をして開発力を高めた。
(4)進捗管理
 次は、開発の進捗管理である。策定した開発計画に対してその進捗を適切に管理しないことには成果を効果的に生み出すことは出来ない。例えば、性能、品質、耐久性、原価低減など技術革新や新製品の結果を出すには、これらのチェックリストを作成してスケジュールとの関係も見ながら管理することが必要である。

5.顧客との接点の強化
 具体的には、顧客からのニーズを引き出す(潜在的ニーズの把握)ことや狙う顧客(マーケット)の想定のことである。そのためには、これまでの単なる営業機能とは質的に異なるものである。詳述すると次のようになる。
(1)顧客の潜在的ニーズの把握
 顧客からの困り事や要望は既に顕在化になっているから、同業他社が手がけていることもある。私が重要と思うのは、顧客が無理と思っていて無意識や言葉に出来ないことを会話の中で捉えて、具現化につなげる機能である。
(2)狙う顧客の想定
 中小企業の場合は、マーケットというと大げさになるのでどちらかというと“狙う顧客”をどのように設定するかの取り組みである。その技術革新や新製品がどの顧客層を対象としているかを明確にする必要がある。時には、事前に顧客調査を行って、当該技術や新製品が狙う顧客に受け入れられるかの“探り”を入れるのである。これもその後の投資のリスクをなるべく小さくする取り組みである。
 いずれにしても、新しい取り組みを行う場合には顧客の接点の領域はこれまでの違う動きをする必要があるということである。

【2】組織的取り組みを行う場合に利用できる国の施策(抜粋)
 中小企業の新しい取り組みを行うことを支援するために国はいろいろな施策を用意している。
(1)戦略的基盤技術高度化支援事業
 我が国製造業の国際競争力の強化と新たな事業の創出を目指し、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に資する研究開発から試作段階までの取組を促進することを目的としている。特に、複数のものづくり中小企業者と、川下製造業者や大学、公設試験研究機関等が広がりをもって連携した取り組みを支援する。
(2)地域イノベーション創出研究開発事業
 本事業は、地域において新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図るため、産学官の研究開発リソースの最適な組み合わせからなる研究体を組織し、新製品開発を目指す実用化技術の研究開発を支援するものである。研究開発区分は、以下二つの区分で行われる。
・一般型
新製品等の開発を目指す実用化技術の研究開発であって、新たな需要を開拓し、地域の新産業・新事業の創出に貢献するとともに、全国的に広く波及効果が期待され、広域的なイノベーションを起こす可能性のある研究開発。
・地域資源活用型
地域に根ざす技術等(地域資源)を活用した新製品等の開発を目指す実用化技術の研究開発であって、新たな需要を開拓し、地域の新産業・新事業の創出に貢献するとともに、都道府県域を超えてイノベーションを起こす可能性のある研究開発。
(3)販路ナビゲーター創出支援事業
 都道府県等の支援により、自社で開発した製品等の販路の確保・拡大を希望している中小企業者に対して支援する。支援内容としては、豊富な経験を有する企業OB等を「販路ナビゲーター」として登録し、販路紹介や販売代行業務等につなげるための「販路ナビゲーターとのマッチングの場」を提供する。

以上

 

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