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中小企業診断士 資格更新論文

平成30年度(2018年) テーマ2「中小企業の人材確保・活用支援」

 

本多ビジネスコンサルティング
中小企業診断士 本多 喜悦

※ 掲載論文の無断転載、無断使用はお断りしております


テーマ2 女性やシニア、外国人など個々の人材の特性を把握した上で、人材確保、育成支援、能力発揮するための就労の在り方、環境づくりについて具体的な事例を交えて述べよ。

1.はじめに
 現在の中小企業と取り巻く人手不足は企業の存続までも左右するような深刻さを増している。白書が述べている通り、経営上の問題として“求人難”は2010年以降増加の一途をたどり、非常に重要な課題となっている。
これは、景気拡大基調にある今日、人口減少や少子化により高卒者、大卒者が中小企業が確保できない要因が大である。
その一方、白書が述べている通り女性のさらなる活用や第1線を退いたシニア層、外国人労働者の採用等これまでにない取り組みも増えている。
本論では、論題に従って中小企業が新たな人材確保等を図り、企業のさらなる発展につなげるために具体的事例を交えて述べる。


2.人材の特性
(1)女性:
[1]20代前半ごろまでは男性と同様な就業率を示しているが、20代後半ごろから結婚、出産で就業率が下がるというM字カーブを示していた。
[2]そのために、いわゆる腰掛的な意識を本人や周りも持っていたという特性がある。
[3]その派生として、管理者に登用されたくない、登用しても辞めてしまうということで、結果としての女性管理者が少ない。
[4]男性との肉体的違いにより就労できる職種が少なかった
[5]女性の大卒者であっても男性の大卒者のキャリアが違い、女性の実力を発揮する環境が十分ではなかった。

(2)シニアの特性
[1]人生経験や職業経験が長いので、スキルや人脈が若者に比べて豊富である。
[2]反面、自分の意見や考えに固執してしまう場合もある。
[3]年金や貯蓄もある人も多く、仕事に対するモチベーションが低い場合がある。
[4]若者よりは健康面で心配な面があるので就業日数、就業時間に懸念がある場合がある。
[5]人間関係を円滑するノウハウを持っていたり、チームワークにはレベルが高い面がある。

(3)外国人
[1]日本語のコミュニケーションに懸念がある場合がある
[2]宗教、文化、食物が異なり、問題が発生することがある
[3]日本人に比べて自己主張が激しい場合がある。
[4]日本人が曖昧にしている部分に明確さを求める場合がある。
[5]母国に帰りたいとのホームシックになることがある。
[5]在留資格の確認をしなければならない。


3.女性やシニア、外国人の就労のあり方、環境づくりについて
 上記3者については上述したようにそれぞれの特性もあることから、それぞれの特性に即した環境づくりと共通的な就労のあり方、環境づくりに分けて述べる。

(1)女性について
女性については、20代、30代の未婚の時については、男性とそんなに変わらないので、特に結婚後の妊娠期以降のあり方や環境づくりについて述べる。

1)妊娠期
[1]体調を崩しやすいこともあることから、年休の時間休化、残業については本人の希望を配慮する環境づくりが望まれる。これは、休憩場所等のハード環境、制度上の見直しなどソフト環境整備の両方がある。
[2]マタニティハララスメントの撲滅の取組みも必要である。職場での上司、同僚も含めた会社全体でのその意識を高めるために研修の実施やポスターの掲示等を行って風土として定着させることが必要である。また、マタハラに限らずパラハラ等も含めた本人の苦痛や悩みを安心して通報が出来るような信頼感のあるコミュニケーションルートも設置も望ましい。

2)子育て期
[1]育児休業法(原則として1歳に満たない子の養育)の定められた以上の期間においても、会社が許容できる範囲での休日を認めることは、本人のモチベーション向上や人材の獲得、退職防止にも有効である。昨今では2歳や3歳になるまで、休業を認める企業も出てきている。
[2]託児所の設置もあり方としては有効である。女性が職場に復帰するには、子供を預かってくれる施設がないといけない。日本の場合は圧倒的に不足している。保育所など待機待ちの女性が如何に多いかである。そこで近年企業単独や複数の企業が共同して設置している例が多くなってきた。これは、いわゆるM字カーブを緩和するためにも有効である。
当地域では、女性社員が多い中小製造業独自で平成19年から認可小規模保育所設置して運用を継続して、社員の他地域の子供も預かっている実態もある。
[3]ITが進んできた今日、在宅勤務の形態も多くなってきた。デザイン、データ整理、企画立案など、在宅でも十分に仕事がこなせる環境が整いつつある。その際には、本人と上司や同僚とのコミュニケーションが十分に取れて孤独にならないように会社側の配慮が必要である。
[4]一度退職した女性の再雇用を認めるケースも出てきている。これまで日本企業は退職した社員の再雇用にはハードルが高かった。その要因は、その社員の処遇や周りの社員の対応などなかなかデリケートな面があったと思われる。しかし、評価制度して、職務級や成果給、役割給などの要素が強まり、属人的要素の評価の色合いが薄まってきた今日では同じ人物の再雇用も環境づくりには有効であると思われる。
[5]女性の特性(妊娠、出産、育児休業の取得等)がネガティブな評価にならない制度のあり方の重要である。逆に、妊娠、出産は人生上大きな出来事で、仕事を見つめ直したり、消費者としての新しい視点の獲得など、仕事上で役に立つ面も大いにある。その間の就業時間が減るかもしれないが、その後にはそれ以上の貢献もあり得るのである。妊娠、出産、育児休業の取得等がネガティブ評価にならない制度であれば、安心して働けるモチベーションとなる。
[6]女性自身のキャリア形成の意識を強く持つことも必要である。これまで、日本特有の男性社会に沿って、寿退社を仕方がないとして腰掛的に仕事をして自分のキャリア形成にはあまり意識してこなかったことについては、妊娠、出産があったとしても自分のキャリア形成をより意識することが必要である。

(2)シニアについて
[1]シニアに期待する具体的な職種の明確化が必要である。それは本人のキャリアの何を必要とするかを明確にすることと等しい。単なる人手不足を補うだけということでは、本人や職場にもあまり良い影響は及ぼさない。
 例えば、若い人への技能の伝承役、営業同行して円滑が商談が進むようにするとか、幅広い職務を期待するのではなく、そのシニアの専門性や経験が生かせる職務を明確にすることが肝要である。
[2]本人との確実な就業条件の合意形成が必要である。例えば、部下の有無、常勤・非常勤であるとか、給与とかである。給与は年金との関係で本人の意向を確認する必要がある。 また、年齢や健康を考えて、フルタイムか否かなど本人とよく話し合ってお互い納得して確実な合意が必要である。企業としては確立したキャリアや力量を買ってその貢献を期待するし、本人もそれに応えようとするが、その両者にギャップがあると、後で気まずい問題が顕在化する可能性がある。

(3)外国人について
1)採用について
[1]まずは、在留資格の確認が必要である。就労が認められる在留資格が限られているので、それに該当するかである。該当しなければ不法就労なので気を付けなければならない。
[2]文化や特有の労働条件があるので、就業にあたっての諸条件を理解させることが必須である。給与や就業時間は文書化で伝えることは容易であるが、評価慣行、年功序列的なことはなかなか伝えづらいが、具体的例示をしながら雇用制度について理解してもらうことが必要である。

2)就業上の管理について
[1]コミュニケーションが不十分で問題になることが良くある。本人からはなるべく日本語のレベル向上を、日本人からは相手の母国語に親近感を持たせるようにお互いに努力できるように配慮する管理が必要である。
[2]また、前述に関係するが、職務の評価結果について本人に説明できるようにしなければならない。日本人はある程度曖昧でも我慢することがあるが、外国人はその確率は低い。評価制度及び評価プロセス、評価結果が見える化させて、説明できるようにする必要がある。


(4)共通的な環境づくり
女性、シニア、外国人の人材確保、育成支援、能力発揮について共通的には上記と若干重複する点もあるが、次のことがある。
[1]本人の希望を受け止める姿勢がまずは重要である。具体的には上司や人事担当者が本人の希望や考えを聞いて、会社側として対応できる面、対応できない面を明確にしてお互いの歩み寄りが可能かどうかを見極めて伝えなければならない。
[2]相談窓口を常設することも有効である。特に諸ハラスメントについては上司や職場には言い難いので、社内での第3者的な窓口も有効である。また、外国人については人間関係や食生活に悩む面も見受けられて、それらに相談できるような社員の設置も有効である。
[3]特性に応じた育成支援制度の充実の中長期的には必要である。例えば、育児休業から復帰した場合は復職プログラム、外国人を採用した場合は当社の歴史や文化ばかりでなく、日本や地域を学ぶプログラムなどである。
[4]社会への広報活動も必要である。ハローワークのみでは限界があるので、ホームページや日常の経営管理の中で、女性、シニア、外国人の就業状況を社会に広報して、人材の獲得に活用する。


4.まとめ
 今後は中小企業といえども多様化した人材を抱えることができる組織風土や体制、管理を強化することが肝要である。多様化を変革の起爆剤とし、成長へつなげることができる経営環境となってきたことを経営者は強く意識しなければならないと思う。

以上

 

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